鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

ABCの活用にメリットのある会社

[要旨]

活動基準原価計算(ABC)は、原価を正確に把握できることから、多品種少量生産をしている会社、間接費の比重の高い会社、コスト面で競争優位に立とうとしている会社に向いています。また、サービス業も、その提供するサービスは、ほぼ、間接費が原価であり、かつ、無形の活動が原価になっているので、ABCの活用の利点が大きいと言えます。


[本文]

今回も、早稲田大学ビジネススクールの西山茂教授のご著書、「『専門家』以外の人のための決算書&ファイナンスの教科書」から、私が気づいた点について述べたいと思います。前回は、活動基準原価計算(ABC)の考え方では、原価は、単に、費用が集計されたものととらえるのではなく、活動の積み重ねによって製品が製造されるのであり、その活動に要した費用を集計するということを説明しました。今回は、ABCに向いている業種について説明します。

西山教授は、ABCを活用することが向いている会社の例を、3つあげています。ひとつは、多品種少量生産をしている会社です。その理由は、多品種少量生産では、さまざまな製品が製造されるので、ほぼ、画一的にお原価計算を行う財務会計では、その誤差がより大きく現れてしまうので、ABCによって原価計算を行うメリットが大きくなります。2つめは、間接費の比重が高い会社です。間接費の比重が高いと、その配賦に誤算があれば、製品の原価計算の結果の誤差も大きくなってしまうからです。

これについては、西山教授は言及していませんが、原価のほぼ100%が間接費であるサービス業は、このような観点から、ABCを活用するメリットが大きいと、私は考えています。むしろ、無形の「活動」によってサービスを提供しているサービス業こそ、「活動基準原価計算」によって正確な原価計算を行うと、より的確な経営判断を行うメリットが出てくると思います。3つめは、コスト面で競争優位に立とうとしている会社です。ABCによってコストを正確に把握することができれば、より積極的な競争に挑むことができます。

2022/5/13 No.1976