鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

ROAは収益性と効率性の総合的指標

[要旨]

ROAは、資産に占める利益の割合を示す指標ですが、売上高利益率と、総資産回転率に分解できます。このことから、ROAは、収益性(売上高利益率)と効率性(総資本回転率)を総合的に見る指標であるとも言えます。


[本文]

今回も、早稲田大学ビジネススクールの西山茂教授のご著書、「『専門家』以外の人のための決算書&ファイナンスの教科書」から、私が気づいた点について述べたいと思います。前回は、上場会社は、一般的に、ROEが5%以上となる業績を求められていますが、これは、投資家がリスクを負っていることの見返りであり、合理的と言える、そして、中小企業も経済活動を営む以上、同様の業績を得ることに意義があるということを説明しました。

今回は、ROAについて説明します。ROAはReturn On Assetの略語で、日本語では総資本利益率と言います。計算式は、ROA=利益÷総資産で、利益の総資産に占める割合を示しています。なお、ROAの計算に使われる利益は、西山教授によると、一般的には経常利益か、支払利息を差し引く前の経常利益が使われるそうです。ちなみに、ROAは、前回説明した、ROEの因数になっています。

ROE=利益÷自己資本=(利益÷総資産)×(総資産÷自己資本)=ROA×財務レバレッジ=ROA÷自己資本比率

また、ROA売上高利益率と総資産回転率に分解できます。

ROA=利益÷総資産=(利益÷売上高)×(売上高÷総資産)=売上高利益率×総資産回転率

このことから、ROAは収益性(売上高利益率)と効率性(総資本回転率)を総合的に見る指標であるとも言えます。実例として、西山教授は、高級レストランのひらまつと、低価格イタリアンレストランのサイゼリヤの指標を示しています。

2018年3月期のひらまつのROA=売上高利益率13.4%×総資産回転率51%=6.8%

2018年8月期のサイゼリヤのROA=売上高利益率5.8%×総資産回転率147%=8.5%

このことからも分かるとおり、サイゼリヤの売上高利益率は、ひらまつの半分以下ですが、サイゼリヤの総資産回転率はひらまつの3倍近くあることから、ROAでは、サイゼリヤがひらまつを上回っています。

このように、自社の事業で低価格戦略をとる場合は効率性を高め、逆に、効率性を低くせざるを得ない場合は利益率を高めることで、ROA確保できます。したがって、これも当然のことですが、効率性が低い事業が価格競争をしたり、価格競争の激しい業界で、自社の事業の効率性を低いままにしたりすれば、業績はあがらなくなります。そして、前述のとおり、ROAはROEの因数でもあることから、ROAを高めることで、ROEを高めることもできます。

2022/4/30 No.1963