鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

正解主義と現場のどうしようもない現実

[要旨]

組織の大きな会社では、本社部門は、現場に対し、机上で考え出した「正解」を押し付けししまいがちです。しかし、それは、多くの場合、真の課題解決につながらないことから、現場の従業員は本社スタッフへは本当のことは伝えにくいという前提に立ち、真の課題を聞き出して対処する役割が求められます。


[本文]

ブリヂストンの元社長の荒川詔四さんのご著書、「参謀の思考法-トップに信頼されるプロフェッショナルの条件」を読みました。同書で最も印象に残った言葉は、「正解主義」という言葉です。これは、製造現場で問題が起きたとき、その改善策として、本社スタッフが机上で考えた正解を現場に押し付けてしまうことの弊害を指しています。もちろん、改善策を考える本社スタッフは、独り善がりになって、自分たちの考えを現場に押し付けようとすることは少ないと思います。

でも、製造現場の従業員から見ると、本社のスタッフは、社長直属であったりするなど、反論しにくい立場にいるので、「現場のどうしようもない現実」を、なかなか伝えにくいということです。荒川さん自身も、入社3年目に、タイの物流センターのセンター長をしていたとき、苦い経験をしたそうです。というのは、本社管理部門が、物流センターの在庫のチェックにきたとき、在庫管理台帳と実際のタイヤの数が合わず、「ボロクソ」に批判されたそうです。

これに対して、荒川さんは、理不尽さを感じたそうですが、その後、これをばねにして管理体制を改善したそうです。具体的には、管理スタッフを増員して毎日在庫数をチェックし、数が合うか、合わない場合は原因が分かるまで帰宅できないようにしたそうです。もちろん、このような在庫管理体制ができるまでに、荒川さんは相当の苦労をしたのですが、本社スタッフから、単に、「在庫数が合わないことはおかしい」と正論を言われただけでは問題点は解決しないので、本社のスタッフは、真の問題点をきき出し、それを解決することが役割だと考えるようになったそうです。

そこで、荒川さんは、本社スタッフは、現場の従業員から、社長に近い立場にいる人たちということを感じさせないように注意しながら、「現場のどうしようもない現実」を聞き出し、真の問題を解決しなければならないと述べておられます。ただ、荒川さんのご指摘は、誰でも理解できることですが、実際には、実践することが難しいということが現実なのでしょう。なぜなら、部下は、権力を持っている人に対して耳障りのすることは、なかなか伝えにくいからです。では、そのようなことが起きないようにするにはどうすればよいのかということについては、次回、お伝えします。

2022/2/21 No.1895

f:id:rokkakuakio:20220220234157j:plain