鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

種撒きをしている会社は逆境に強い

[要旨]

会社が資金繰に窮してしまうと、資金繰の維持だけで手がいっぱいになり、収益を得るための活動にはなかなか手がまわらなくなります。したがって、資金繰が悪化する前に、収益を得るための活動をすることが大切です。しかし、それが実践できない会社が多いということも現実のようです。


[本文]

事業再生コンサルタントの吉田猫次郎さんのメールマガジンを読みました。要旨は、コロナ禍で資金が枯渇した会社が増えており、それらの会社は、銀行融資、納税猶予、財産処分、人員削減などを実施している。しかし、それらは単なる資金維持でしかなく、抜本的な改善ではない。本来は、収益を得るための活動、すなわち、平時からの「種撒き」を怠ってきたために、なかなか苦境から抜け出すことができないでいる、というものです。

私も、吉田さんの考えと同感です。資金繰が悪化した会社の支援をするとき、当然かもしれませんが、私たちのような専門家は、資金繰の維持に全力を注ぎます。しかし、それは、前述のように、根本的な解決策ではありません。本当に解決しなければならない課題は、会社が収益を得られるようにすることです。

しかし、資金繰が悪化している会社では、目の前の資金繰を維持するための活動で手がいっぱいになり、そこから抜け出すための活動まで、なかなか手がまわりません。これは、私も経験があるのですが、資金繰支援をしている会社の経営者の方に、「も薄こし、利益を得るための活動に手を広げませんか」と提案をしても、「いま、当社にそんな余裕はない」と一蹴されることがしばしばでした。

確かに、徳俵に足がかかっている状態では、99%の会社は、土俵外に足が出ないようにするだけで精一杯です。土俵際で、逆転の「うっちゃり」を打てる会社は、100社に1社もないでしょう。したがって、厳しい言い方をしますが、徳俵に足がかかる状態に追い込まれてしまえば、勝負は、ほぼ、決まったようなものなのです。ですから、土俵際に追い込まれる前に、稲盛和夫さんがご指摘しておられるように、「土俵の真ん中で相撲をとる」ことが大切と言えます。

ところが、会社は、少しだけ赤字になった状態では、直ちに事業が停止したりはしません。それまでの信用があるので、ある程度は活動が維持できます。しかし、それに甘んじて、種撒きなど、何ら収益を得るための活動をしなければ、そのまま土俵際に追い込まれてしまいます。そうなってしまうと、前述のように、挽回策を打てる余力はなく、ほぼ、勝負はついてしまいます。

ですから、繰り返しになりますが、徳俵に追い込まれてから何とかしようとしても、宝くじに当たるような確率でしか、事業は改善しません。会社に赤字が出た時点で、口だけでなく、本気で改善策を打たなければ、ゆでガエルのようになってしまいます。このことは、至極、当然のことなのですが、吉田さんがメールマガジンに書いてるからもわかる通り、残念ながら、それが実践できていない会社は珍しくないことも事実のようです。

2022/2/8 No.1882

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