鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

事業拡大とリスク管理

[要旨]

事業規模が拡大するにつれて、回収不能になる売掛金が増えるなど、リスクも増加します。そこで、あまり高くする必要はありませんが、管理活動にも一定の労力を注ぐことが大切です。避けなければならないことは、リスク管理をまったく行わないまま事業を拡大していくことです。


[本文]

前回、売掛金は、回収されない可能性があることを前提に、準備をしておくことが大切ということを書きました。ところが、この準備は、あまり行われない会社が多いと、私は感じています。これは、売掛金だけでなく、棚卸資産についても共通することなのですが、売上高が増えれば、それに合わせて売掛金棚卸資産も増加します

売掛金が増えれば、回収ができなくなる金額も増えますし、棚卸資産が増えれば、棄損したり、売れ残ったりする棚卸資産も増えます。ところが、多くの経営者の方は、売上高を増やすことには多くの労力を注ぎますが、それにともなう、売掛金の回収もれや、棚卸資産の棄損などについての対応は、それほど労力を注ごうとしません。その原因は、売上を増やす活動は華やかである一方で、売掛金管理や棚卸資産管理は地味な活動であるからかもしれません。

とはいえ、私も、販売活動と管理活動の労力の割合を、5:5にする必要はないと思います。販売活動に7~8で、管理活動は2~3程度でよいと思います。ただ、最近、上場会社の不祥事が増加していることをから鑑みて、管理活動の重要性が高まってきているとは思いますが、それでも、中小企業は、販売活動の労力の比重を大きくすることは、妥当と言えるでしょう。

ただ、問題なのは、中小企業には、管理活動にまったく関心がない、もしくは、管理活動をどのように行えばよいかが、よくわからないという経営者の方がいることもあります。繰り返しになりますが、売上高が増加していけば、それにつれて事業のリスクも増加していきます。そのリスクは回避できないものではあるものの、ある程度は、管理体制の構築によって、減らすことができます。

だからこそ、事業をより安定的に発展させるためには、管理活動にも労力をあてなければなりません。私は、有能な経営者とは、限られた経営資源を適切に配分する判断ができる経営者だと考えています。したがって、販売活動と管理活動への労力の配分を上手に行える経営者が経営する会社は、最も安定的に成長するでしょう。繰り返しになりますが、管理活動をまったく行わない会社は、最も、不安定になるでしょう。

2022/1/20 No.1863

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