[要旨]
平鍛造の前社長は、導入後3年しか経っていない1億円の回転炉が故障したとき、生産が停止し、今後、ボトルネックになることを懸念し、買い替えすることを決断しました。このような、改善策を決断することは容易なことではありませんが、それを決断できることが経営者としての重要な資質です。
[本文]
今回も、前回に引き続き、平鍛造前社長の平都美江さんのご著書、「なぜ、おばちゃん社長は『無間改善』で利益爆発の儲かる工場にできたのか?」を読んで気づいた点についてご紹介したいと思います。「儲からない、利益が残らないという会社の経営者ほど、ボトルネックへの問題意識が薄いと感じます。機械が古い、営業が弱いなどと考えるばかりで、人を代えずとも、機械を入れ替えずともすぐにできることがあるなど、考えもしません。そして、果ては景気が悪いから、発注してくる会社の値引き圧力が厳しく利幅が薄いから、従業員がバカばかりだから…などと文句を言い始めます。
私は、(回転炉が故障したとき)ボトルネック解消のために大胆な設備投資、廃棄に踏み切りました。ただ、それは、ボトルネックを見極めたあとの究極的な話です。重要なことは、景気が悪くても、利益率の悪い仕事でも、新しい有能な従業員を採用しなくても、できることがたくさんあるという視点です。(中略)ボトルネックの発見と解消が大切、儲かるネタやアイデアは、社長自身の頭の中に、自社の内部にあり、その改善には『速攻』的な効果があります」(127ページ)平さんは、購入後、3年経った1億円の回転炉が故障したとき、修理に2日はかかるうえ、今後も故障して生産が停止する可能性があることから、買い替えを決断しました。
こう考えると、本当は、改善できることがあるのに、それを実行する決断を避けるために、業績の悪化の原因を景気や従業員の能力にしてしまう経営者が多いと、平さんはご指摘しているようです。とはいえ、1億円の回転炉を3年間使っただけで廃棄するという決断をすることは、なかなか難しいと、私も感じます。でも、それができるから、平鍛造は大きく事業を発展させることができたのだと思います。決断することの重要性を、平さんの本を読んで、改めて感じることができました。
2022/6/8 No.2002