鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

日本酒は安すぎるから粗末に扱われる

[要旨]

日本酒は、原価から値決めをするということが多く、その結果、販売価格が安くなることから、買い手からも高く評価されていません。でも、品質管理をきちんと行うことによって、ワインのように、適正な価格で評価されるようになります。このように、価格はどのような要素で決まるのか、きちんと分析することが大切です。


[本文]

ダイヤモンドオンラインに、黒龍酒造代表の水野直人さんへのインタビュー記事がありました。「醸造家が想いを込めた手造りの日本酒は安すぎると思うんです。安すぎるから粗末に扱われる。これが高額だったら、品質や信頼を落とした時には大変なことになりますよね。品質管理を真剣に行うと思います。だから、自信をもって値付けしていくことが大事です。日本酒業界はまだまだ原価計算で値付けがされる。でも、そのものの価値で値付けがされた方がいいです。

小さなワインメーカーでも、世界的に認められて、収益を得ているところがありますよね。日本酒でもそうなれば、雇用や設備に投資できますし、新たな商品も開発されていきます」水野さんは、ワインの流通方法などを参考にしながら、日本酒の価値向上に取り組んで来た方です。このように書いては安易すぎるかもしれませんが、ワインには価格の高い銘柄があるわけですから、日本酒にも同様のものがあっても不思議ではないと思います。

そして、水野さんは、その原因として、日本酒では、「原価計算で値付けされる」ことを挙げています。でも、日本酒の本来の価格は、ワインと同じように、品質管理が大きな部分を占めていると水野さんは指摘しています。品質管理をきちんと行っていれば、それに応じた価格で評価されます。この論理は理解が容易と思いますが、日本の多くのメーカーでは、あまり実践されていないようです。ちなみに、この考え方に基づいた値決めを行えるようにするための方法として、価値連鎖分析を行うとよいと思います。

繰り返しになりますが、日本酒の価格が、原価からのみで決められているとすれば、適正な値決めは行われないでしょう。でも、価値連鎖分析を行うことによって、品質管理に価値があるということを理解できれば、適正な値決めをすることができるようになると思います。日本のメーカーには、目に見えない無形なものに価値をつけることができないという先入観を持っている会社は、まだ、少なくないと思います。でも、まず、無形なものであっても価値があると考えなければ、水野さんの指摘するように、「安すぎるから粗末に扱われる」という状況に陥ったままになってしまうでしょう。

2021/12/25 No.1837

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