鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

在庫回転率より在庫仰天率

[要旨]

飯田屋では、あえて、在庫量を多くし、他店では販売していない商品を販売することにより、業績を伸ばしています。すなわち、一般的には、在庫量は少ない方がよいと言われていますが、どのような販売方法を行うかによって、適切な在庫量も異なります。


[本文]

今回も、かっぱ橋道具街の料理道具専門店の飯田屋の社長、飯田結太さんのご著書、「浅草かっぱ橋商店街リアル店舗の奇蹟」を読んで、私が注目したことについて述べたいと思います。飯田屋では、他店にはない商品を敢えてそろえているそうです。その結果、在庫回転率は業界水準の3分の1になっているということです。これは、逆に言えば、同じ売上を得ている店と比較して、3倍の金額の在庫があるということです。一般的に、在庫額は少ない方がよいのですが、別の考え方もあります。

付加価値額と在庫額の比較も大切です。これを把握する指標にGMROIというものがあります。GMROIの計算式は、GMROI=売上総利益÷在庫額(原価)で、売上総利益が在庫額(原価)のどれくらいの割合になっているかということを示しています。一方、在庫回転率は、在庫回転率=売上高÷在庫額(原価)です。在庫回転率は高い方がよいということは事実ですが、高いことともうかることとは、必ずしも一致していません。もうかっているかどうかは、GMROIの方で把握できます。

とはいえ、在庫回転率が高い会社は、GMROIも高いことが多いので、必ずしも、GMROIだけを重視すればよいということではありません。ところが、飯田さんは、あえて、在庫額にはこだわらない方法をとりました。でも、在庫額が多いことによって、利益額が増加すれば、その方法は妥当ということになります。事実、飯田屋では、飯田屋ではないと買うことができない商品を在庫として持つことで、店の魅力を高め、売上と利益の増加に成功しています。

とはいえ、闇雲に在庫額を増やせばよいということはいうまでもありません。死に筋商品となるものは極力避けたり、また、他店では売れない商品を販売できる能力を高めたりする必要があります。すなわち、どのような販売方法をとるかということによって、適切な在庫額も異なるということです。そして、在庫量を多くしても、付加価値率を高めることで、利益を増やすことは可能です。ただし、その手法は難易度が高いので、習得することができれば、競争力を高めることができるでしょう。

2021/12/20 No.1832

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