鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

心理的安全性と仕事の基準

[要旨]

職場の心理的安全性を高くしたからといって、そのことだけでヌルい職場になってしまうわけではありません。むしろ、仕事の基準だけを高くしても、心理的安全性が高くなければ業績もあがりません。したがって、経営者の方は、心理的安全性と仕事の基準の両方を高めることが大切です。


[本文]

ZENTechのチーフサイエンティストの石井遼介さんが、日経クロストレンドに、心理的安全性に関して寄稿していました。石井さんによれば、心理的に安全な職場は、「ぬるま湯」や「危機感の足りない職場」ではないかという誤解が起こりがちであるが、それは、仕事の「基準」が低いときにそうなるということです。石井さんのいう「仕事の基準」とは、妥協点や妥協するラインのことで、目標を達成できなかったり、プロジェクトがうまくいかなかったりしたとき、「まあいいや」と妥協するような風土であれば、それは基準の低い職場だということになるそうです。

そこで、心理的安全性と、仕事の基準の2つの軸で職場を分類すると、石井さんの考え方がよく理解できます。まず、心理的安全性と仕事の基準のいずれも低い職場では、メンバーは互いに無関心で、衝突を避けるだけの状態になります。言うまでもありませんが、このような職場は大きな業績を得ることはできません。つぎに、心理的安全性が高く、仕事の基準が低い職場では、これが「ヌルい職場」になるということです。

そのつぎに、心理的安全性が低く、仕事の基準が高い職場では、チームワークが機能しないまま、ノルマだけに追い立てられるような状態であり、あまり望ましい職場とは言えないようです。最後に、心理的安全性と仕事の基準のいずれも高いときは、職場の学習が促進され、高いパフォーマンスも得られるということです。この石井さんの指摘は、多くの方が理解できると思います。

繰り返しになりますが、誤解されがちな心理的安全性を高くすることについては、そのことだけでヌルい職場になってしまうわけではなく、むしろ、仕事の基準だけを高くしても、心理的安全性が高くなければ業績もあがらないということです。でも、心理的安全性と仕事の基準の両方が高い職場をつくることは、口で言うほど簡単ではないことも事実でしょう。パフォーマンスの高い職場をつくる役割は、経営者の方が担っていますが、その職責を果たすことは、本当にむずかしいですね。

2021/11/28 No.1810

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