鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

揺るがすことができない事実

[要旨]

会議の場においては、部下は、自分にとって不都合な事実は、直接的に報告しなかったり、隠そうとしたりします。しかし、そのような行為は、最善の意思決定につながらないことから、部下が、隠し事をせず、「揺るがすことができない事実」だけを報告できるような企業風土を、経営者はつくらなければなりません。


[本文]

今回も、ITT元社長の、ハロルド・ジェニーンの著書、「プロフェッショナルマネジャー」の中から、参考になると思われた内容についてご紹介したいと思います。前回、ジェニーン氏は、子会社のマネージャーたちと、直接、顔を合わせて会議を開き、改善点を究明することで、業績を伸ばしてきたということを述べました。そして、その会議では、ジェニーン氏は、「事実」を重要視していたようで、次のように述べています。

「プロフェッショナル・マネジメントという最高の芸術は、”本当の事実”を、それ以外のものから”嗅ぎ分ける”能力と、さらには、現在、自分の手もとにあるものが、”揺るがすことができない事実”であることを確認するひたむきさと、知的好奇心と、根性と、必要な場合には無作法さも備えていることを要求する」要は、会議の場で報告される「事実」は、報告される側が批判されないよう、不正確なものとされてしまうので、経営者は、それを見抜かなければならないということです。

その理由は言及するまでもありませんが、正しい結論を導くためだからです。とはいえ、報告の内容を、「揺るがすことができない事実」だけにしてもらうようにすることは、直ちには難しく、ITT社でも、数年を要したようです。具体的にジェニーン氏が行ったことは、揺るがすことができない事実を報告することは、業績を高めるために必須であり、逆に、そうしなかった方が、マネージャーにとっても得策ではないということを理解してもらうよう努めたようです。

当然、「事業で失敗した」などといった、報告したくない事実も報告してもらうからには、失敗そのものは批判しないようにしたそうです。すなわち、ジェニーン氏は、マネージャーたちに心理的安全性を持たせたことになると思いますが、このようなことができるような企業風土を会社に植え付けることが大切だということです。このことは、多くの方が同感できると思いますが、実際には、なかなかできないことであり、そこにITTの強さの所以があるということを、改めて感じました。

2021/11/20 No.1802

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