[要旨]
経営者保証については、多くの銀行は、可能な限り、経営者保証なしの取引を望んでいるようです。したがって、業績があまりよくない会社でも、銀行と、頻繁なコミュニケーションをとることで、経営者保証なしで融資を受けることが可能になると思われます。
[本文]
先日、金融庁が、「『経営者保証に関するガイドライン』の活用に係る組織的な取組み事例集」の改訂版を公表しました。この事例集は、「『経営者保証に関するガイドライン』の活用が、今後、更に促進され、融資慣行として一層の浸透・定着していくために、金融機関において各種取組みを検討する上での参考となるよう公表するもの」ということです。
まず、事例1(地域銀行)では、「経営者保証による債権の回収額は僅かであり、経営者保証が無くても銀行の経営面への影響はないことを踏まえて、保証徴求の判断や回収に要する時間を、顧客とのリレーション構築に使いたいとの経営トップの考えの下、原則、経営者保証を徴求しない取組みを実施」とあります。
事例2(地域銀行)でも、「取引先の多くが中小・零細企業であるため、ガイドラインの要件を満たさない場合が多く、ガイドラインをそのまま適用するとほとんどの取引先に経営者保証を求めることになる。また、経営者保証を求めても、ほとんどの場合で保証人からの回収を行うことができないため、債権保全としての機能はあまり果たされていない。このことから、できる限り経営者保証を求めない方針で取り組んでいる。
具体的には、取引先とのコミュニケーションを通じて実態把握が十分に行なわれている場合であれば、信用格付の低い先であっても経営者保証を求めないこととしている」という取組みが紹介されています。これらの取組は、すべての銀行が行っているわけではありませんが、少なくとも、紹介されている事例に取組んでいる銀行は、経営者保証は、規律付けが目的であり、実際には、経営者の財産で融資を回収することは、ほとんどないと考えていることがわかります。
また、私は、このように考える銀行は、決して少数派ではないと思います。したがって、銀行は、できるだけ経営者保証なしの融資取引を望んでいるわけですから、経営者保証なしの取引を望んでいる経営者の方も、綿密なコミュニケーションを行うことで、それに応じてもらえる可能性が高まると、私は考えています。さらに、事例集で紹介されている他の事例を読んでいただき、円滑な折衝に活用していただきたいと思います。
2021/10/7 No.1758