[要旨]
三菱電機の不正品質検査事件が起きた要因のひとつは、問題点に積極的に対処しようという経営者層の関与が欠如していたということがあげられます。事業活動が適切に行われるようにするには、単に、指示を出すだけではなく、積極的なマネジメントが欠かせません。
[本文]
日本経済新聞が、不正品質検査事件を起こした三菱電機の調査報告書に関して報道していました。記事には、調査報告書から、次のような言葉が抜き出されていました。「長崎製作所には、『言ったもん負け』の文化のようなものがある」「いままで、これでやってきたんで、このとおりやりなさい」「通報がとりあげられても、結局は、問題の是正を行うのは工場の現場」「ヘタに突っ込むと、生産が成り立たなくなるかもしれないため、換算の具体的な内容は確認しなかった」
私は三菱電機については詳細な状況を把握していないのですが、記事だけを読んで私が感じたことは、同社には「経営」が欠如しているのではないかということでした。というのは、「(もし、改善を提案した場合)言い出した者が取りまとめ役をさせられるにもかかわらず、業務量の調整をしてもらえないので、単純に仕事が増える」、「仮に不正を認識していても、内部通報制度は使わなかったと思う、匿名と言いながら、会社は通報者をあぶり出すのではないかとの懸念がある」といった従業員の言葉があったからです。
これらから読み取れることは、経営者はよい報告しかきこうとせず、悪い報告は、暗に、拒んでいたと想像できます。同社の不正品質検査が起きた要因は、これだけが原因ではないと思いますが、経営者の積極的な関与がなかったことが、そのうちの大きな部分を占めていることは事実だと思います。今回の事件は、事業活動は、単に、製品を製造してだけいればよいということではなく、適切なマネジメントが欠かせないということがわかる事例になっていると思います。
2021/10/6 No.1757