鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

中小企業融資のリスクウェイトの変更

[要旨]

銀行は、自己資本比率規制によって、融資できる金額に上限があります。しかし、金融庁は、2024年3月末から、中小企業向けの融資の規制を緩める予定であり、銀行の融資姿勢が改善することが予想されます。


[本文]

9月20日の日本経済新聞が、「金融庁は2024年3月末から、地方銀行や信用金庫に新たな資本規制を導入」し、「中堅・中小企業向け融資のリスクを今より軽くする」と報道していました。銀行には自己資本比率規制というものがあり、融資できる金額に上限があります。ほとんどの地方銀行が該当する、国内業務だけを営んでいる銀行は、自己資本比率は4%以上でなければならないとされていますが、これを簡単に言えば、純資産の25倍が融資の上限ということです。

例えば、純資産が100億円の銀行の自己資本比率が4%以上となるためには、銀行の資産(そのほとんどは融資債権)は、純資産の25倍の2,500億円以内でなければなりません。(自己資本比率4%=純資産100億円÷資産2,500億円)しかし、自己資本比率規制において、自己資本比率を計算するときは、単純に、金額だけで計算をせず、融資額に対してリスクウェイトを乗じて計算します。例えば、格付がAA以上の大企業への融資のリスクウェイトは20%とされていますが、これは、自己資本比率を計算するときの融資額は、実際の金額の20%で計算すればよいということです。

このようなリスクウェイトが低い融資を増加しても、自己資本比率を引き下げる度合いは低いので、より多くの融資ができるということになります。そして、中小企業への融資のリスクウェイトは、現在は、75%となっていますが、日本経済新聞の報道によれば、それを引き下げることによって、理論上は、さらに、中小企業への融資を増やすことができることになります。

ただし、東洋経済新報社の調査によれば、地方銀行100行のうち、自己資本比率が最も低い島根銀行自己資本比率は7.12%であり、自己資本比率がネックとなって融資を増やすことができないという状態にはなっていません。とはいえ、銀行側も、リスクウェイトが低いと、心理的な面で融資に応じやすくなるということは確かだと思います。

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