[要旨]
日本経済新聞の報道によれば、地方銀行の一部は、前倒しで引当金を積み増し始めました。これは、銀行が、近い将来、融資の返済が不能になる会社が増加すると見込んでいることであることから、現在、セーフティネット保証などを利用している会社は、銀行と綿密な相談をしながら、確実に融資の返済をしていくことが望まれます。
[本文]
8月27日に、日本経済新聞が、「新型コロナウイルス禍が長期化する中で、全国15の地方銀行が将来発生すると予測する損失を前倒しで処理し始めた」と報道しました。ある意味、いまは、セーフティネット保証などによって、業績の悪化している会社が表面化していませんが、セーフティネット保証つき融資の返済が進んでいくと、それが表面化していくでしょう。そのような観点から、前述の15の銀行の対応は妥当なことであると言えます。
そして、このような銀行の動きから、融資を受けている会社側としても、今後の銀行取引に関して、注意が必要だと思います。ひとつは、引当金を積極的に積んでいる銀行は、裏を返せば、融資相手の中に、融資の返済が難しくなった会社があれば、すでに損失を見込んでいるので、ある意味、不良債権の処理をにあまり躊躇しなくなるということです。したがって、業績が悪化して、返済が苦しくなった会社は、支援の交渉の余地が狭くなるということです。
もうひとつは、引当に積極的な銀行と、そうでない銀行に、銀行が分けられて行くということです。引当に積極的な銀行は、財務基盤に余裕がある銀行です。そのような銀行は、景気が下降局面にあっても、相対的に新たな融資には積極的になるでしょう。一方、財務基盤にあまり余裕のない銀行は、景気下降局面では、新たな融資には、あまり積極的になれないでしょう。このような銀行の姿勢の変化は、直ちに起きるものではありませんが、将来の資金調達に不安のある会社は、なるべく早い段階から、銀行と綿密な相談を行うことが望まれるでしょう。