鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

バズワードには注意

[要旨]

「流行の経営専門用語」であるバズワードは、それを使ってプレゼンテーション資料を作っていると、きちんとした経営戦略を策定した気分になってしまうことが多いので、注意が必要です。したがって、バズワードの正しい意味を理解し、バズワードを使うことを目的化せず、きちんと自社に効果があるかどうかで判断して採り入れることが大切です。


[本文]

今回も、一橋大学楠木建教授のご著書、「ストーリーとしての競争戦略」から、私が気になったところをご紹介したいと思います。今回は、バズワードについてです。バズワードにはいろいろな意味があるようですが、楠木教授は、「流行の経営専門用語」のことを指しているようです。

具体的には、メガコンペティション、ディスインターメディエーションロングテールなどのことだそうです。そして、楠木教授は、このようなバズワードを使ってプレゼンテーション資料を作っていると、きちんとした経営戦略を策定した気分になってしまうことが多いと指摘しておられます。

私も同じようなことを感じていました。例えば、「当社は、コアコンピタンス戦略を実践している」という中小企業があったとします。でも、そのような会社の経営者は、恐らく、単に、「自社の強みを活用する戦略」を実施しようとしていることがほどんどだと思います。

コアコンピタンスは、「中核となる強み」のことですが、単なる強みというだけではコアコンピタンスとは言わず、きちんとした定義があります。(コアコンピタンスの詳細な説明は割愛しますが、ご関心のある方はこちらをご参照ください。→ https://bit.ly/3yjTtVa

そして、100%無理ではありませんが、中小企業では、コアコンピタンスを持つことは容易なことではありません。したがって、「コアコンピタンス戦略をとる」と考えている経営者の方は、コアコンピタンスのことを、単なる自社の強みのことであると、誤って考えていると思われます。

そして、私は、バズワードを使うことそのことが問題ではないと思いますが、横文字は、意味をきちんと理解せずに使ってしまったり、それを使うだけで何か新しいことを始める気分になってしまったりするという、悪い効果があるので、注意が必要だと考えています。

ちなみに、以前、ご紹介したことがありますが、正社員2名、パートタイマー7名の中小企業である、ビニール傘メーカーのホワイトローズでは、「マーケットイン」を意識した「プロダクトアウト」という考え方によって、高級ビニール傘という「ニッチ市場」に「セグメンテーション」を行うことで、「ロングテール」効果を得ています。

このように、「バズワード」をたくさん使って説明できるすばらしい経営をしている中小企業もあります。したがって、問題なのは、バズワードで説明できるかどうかではなく、バズワードの考え方によって効果が得られる戦略になっているかどうかが問題ということです。

ちなみに、先日、ワタミ創業者の渡邉美樹さんが、10月から社長に復帰するという発表がありました。それにあたって、渡邊さんが兼任していたCEO、新副社長(現社長)の清水さんが兼任しいていたCOOの役職を、いずれも廃止するそうです。

これは私の想像ですが、日本の会社では、CEOやCOOを「兼任」している経営者が少なくありませんが、実態は、社長とCEOの役割は同じで、「兼任」するほどのものではなく、バズワードとして肩書につけてるだけの会社が多いのではないかと思っています。

そこで、ワタミでも、あえてCEOを「兼任」する意味はないと考え、CEO職を廃止したのではないかと、私は想像しています。ちょっと偉そうな書き方ですが、この私の想像が本当であれば、ワタミの決定は、無意味なバズワードを排除しようとする、適切な決定だと思います。

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