鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

マクロ的視点と長期的視点


[要旨]

大企業であっても、経営者は、目標や実施体制の確認をすることで、経営戦略を考えたと思い込んでしまうことがあります。そのようなことを防ぐためには、経営者は、意識して、マクロ的、かつ、長期的視点で事業を俯瞰し、適切な経営戦略を考えなければなりません。

[本文]

今回も、一橋大学楠木建教授のご著書、「ストーリーとしての競争戦略」から、私が気になったところをご紹介したいと思います。今回は、経営戦略についてです。楠木教授によれば、日本を代表する、ある企業で経営戦略を検討する会議にオブザーバー参加したことがあったそうです。しかし、その会議では、各部署の担当者が目標設定や実施体制の確認だけを行っただけで、経営戦略については話し合われていなかったそうです。

これについて、楠木教授は、「目標の確認や、実施体制の打ち合わせをしていると、参加している人たちは、経営戦略を練っていると感じてしまうのだろう」と分析しておられました。経営戦略については、明確な定義がないので、経営戦略が指すものは何かということは、会社や人によってそれぞれですが、一般的には、目標を達成するための道筋を示すものです。目標や実施体制は、経営戦略と密接な関係はあるものの、それは経営戦略ではありません。

ここからは、私の考えなのですが、実は、営戦略を考えることは、意外と難易度が高いので、普段はあまり意識していないことから、打ち合わせ会議などでも、頭の中心に置かれていないのだと思います。これを別の面から述べると、経営戦略は、マクロ的、かつ、長期的視点で検討することであるから、日常の活動に注意が向いていると、マクロ的、長期的視点を持ちにくく、経営戦略には、なかなか、考えが至らないのではないかと思っています。

私も、この、日常の活動に追われて、長期的な視点で仕事をするということは、なかなか実践できていないので、あまり他人のことは批判できません。ただ、戦略的な活動を行っている会社の方が、ミクロ的で短期的な視点で事業に臨んでいる会社よりも、競争力は高くなることは事実だと思います。だからこそ、事業にかかわる全員が、事業の現場にばかり目を向けることは好ましくないと言えます。

では、マクロ的で長期的視点で事業を見る役割は誰にあるのかというと、それは、経営者(および、幹部従業員)です。経営者の方は、まったく事業の現場に関わってはならないわけではありませんが、軸足を、事業を俯瞰する場所に置いていなければ、その役割を果たすことはできず、また、事業の競争力を高めることもできなくなるでしょう。

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