[要旨]
自社の顧客を増やすための直接的な活動は行わずに、人によろこばれることをすれば自社の顧客や売上が増えるという、誤った考え方をしている経営者の方を見ることがあります。そのような方は、事業活動の成否よりも、自分が称賛されるかどうかに最大の関心があるので、事業そのものに注力できず、業績はなかなか向上しないでしょう。
[本文]
作家の本田健さんが、本田さんが配信しているポッドキャスト番組で、あるリスナーの方からの質問に回答していました。すなわち、そのリスナーの方は、SNSのCLUBHOUSEでルームを起ち上げ、著名人を招いてお話をしてもらい、たくさんのリスナーによろこんでもらっているが、自分の事業の顧客は増えないのはなぜかという質問をしました。これに対し、本田さんは、多くの方によろこんでもらえることをすることと、顧客が増えることは、直接的な関係はないと答えています。
これは、至極、当然のことなのですが、このような、誤った集客活動をしている人はしばしば見られ、そのような方自身は、自分のしていることの誤りには、なかなか気づかないでいることも多いようです。もちろん、人によろこばれることをすることそのものは問題ではないのですが、自社の事業が軌道に乗っていないにもかかわらず、自社製品に関する直接的な広報活動は行わず、慈善活動のようなことに注力していては、自社の事業の基盤が不安定な状態が続いたままになってしまいます。
慈善的な活動は、まず、自社の事業が安定していて、さらに、別のアプローチによって顧客の裾野を広げようとする会社が行うべきでしょう。ところで、「社会の役に立つ仕事をしたい」という希望を口にする経営者の方を見ることがありますが、私は、そのような方の考え方を理解できません。なぜなら、そもそも、会社の利益は、自社の事業から産み出される製品を、顧客が評価することによって得られるからです。
すなわち、事業活動そのものが、社会から評価される活動を前提にしています。したがって、「社会の役に立つ仕事をしたい」と口にする経営者の方は、社会の役に立たない仕事もあると考えている、すなわち、単に仕事をしているだけでは評価されないから、さらに何らかの評価を受けるようなことをしなければならないと考えているのでしょう。そう考えれば、そのような経営者の方は、本田さんに質問をしたリスナーの方と、根本的な部分は同じということでしょう。
では、なぜ、そのような方たちは、あえて「社会の役に立つ」ことをしようとするのでしょうか?その理由はいくつかあると思いますが、私は、仕事をする目的が、事業そのものではなく、自分が称賛を受けようとすることになっているからだと思います。そのような方は、自分が称賛されるかどうかに関心が向き、事業活動そのものに注力することができないので、事業がうまく行く確率は低くなってしまうと思います。