鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

社長の仕事は仕事をしないこと

[要旨]

宮田運輸では、みらい会議を開くことによって、従業員の方が能動的に改善活動を行うようになりました。ただ、そのような会社では、社長の「出番」が減ることになりますが、社長の役割は、仕事をしないことということを認識する必要があります。


[本文]

前回、運送会社の社長の宮田さんが、従業員の方たちに自発的に働いてもらえるようにするために、毎月、みらい会議を開いているということを伝えました。みらい会議では、各営業所ごとの詳細な業績をオープンにして、参加者に、目標を達成するためにはどうすればよいのかという観点ではなく、数字の意味を理解してもらうようにし、そして、そこから実際の仕事をするにあたって、どこをどう改善すればよいかを考えてもらっているということです。

ところで、このような会議を、他の会社で実際に開こうとするとき、まず、会社の情報をオープンにしてしまって大丈夫かという不安を、経営者の方が抱いてしまうようです。私も、その懸念は理解できなくもないのですが、従業員の方に当事者意識を高めてもらうには、やはり、従業員の方を信頼して、データを見てもらわなければなりません。

むしろ、そういうデータを公開するからこそ、従業員の方は、経営者から自分たちは信頼されているということを認識できるようになります。だからこそ、その信頼に応えようという気持ちになることができるのだと思います。そして、もうひとつ、みらい会議のような会議を実践することの「壁」があると、私は考えています。それは、社長の出番が減ることです。というのは、直接的な改善活動を行うのは、従業員の方たちだからです。そして、それを実践して成功した時の「手がら」も従業員の方たちのものです。

もちろん、社長としても、「部下たちが能動的に活動し、そのことによって事業が改善している」ということになったら、それはうれしいと感じるとは思います。その一方で、これでは自分の出番があまりなくなるのではないかという心配も、心の片隅で感じるのではないでしょうか?宮田さんも、社長就任直後は、微に入り細に入り、部下に指示を出していたようであり、気負っている状態では、多くの人は、「自分が、自分が…」という状態になってしまうのだと思います。

この、「自分が、自分が…」という気持ちになってしまうことは、避けなければならないということも、多くの方は理解しているとは思いますが、それでも、「会社は自分が引っ張らないと…」と思ってしまうことが多いのだと思います。自分が前に出たいという気持ちを抑えることは、経営者としては、ちょっと、つまらないと感じることもあると思いますが、従業員の方に能動的に動いてもらうようになるためには、経営者の方は、一歩、引かなければならないということを、宮田さんの本を読んで、感じました。

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