[要旨]
自社の債権に貸し倒れが発生したとき、それは、銀行取引に悪い影響を与えます。しかし、それを隠そうとすることは、かえって、銀行からの不信感を高めることになりますので、積極的な情報開示を行うことが大切です。
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経営コンサルタントの小山昇さんのラジオ番組に、ゲストとしてご出演されておられた、アースコム社長の丸林信宏さんのお話を聴きました。丸林さんによれば、同社は、一時期、資金繰が苦しい状態にあったものの、銀行との話し合いを行った結果、支援をしてもらえるようになったということです。
その内容については、詳細な部分まではお話しておられませんでしたが、数億円の金銭債権(前渡金)の回収不能分について、貸倒損失として処理をすることにし、それに際して、顧問税理士とともに、銀行に説明してから実行したようです。この内容は、やや漠然としていますが、一般的に、数億円の貸倒処理を行う会社は、銀行から警戒されます。しかし、同社は、事前にそれを行いたいという意向を銀行に伝え、銀行の理解を得た上で行ったことから、銀行からの信頼を得たのだと思われます。
融資相手の会社に、数億円の貸倒があるということは、銀行も、事前に気づくものです。しかし、それについて、どう対処するのかということは、銀行から融資相手の会社に対しては、ききにくいものです。なぜなら、そのような質問をすることは、経営者の責任を問うものと受け止めらる可能性があるからです。最悪の場合、経営者の感情を損ねることになり、深い溝ができてしまいます。
しかし、損失を回避できない事実は変わらないわけですから、経営者の側から貸倒損失があることを認め、それに関してどう対処していくのかという方針を表明すれば、銀行としても、支援の意向を打ち出しやすくなります。融資を受けている会社は、銀行に対して、ネガティブな情報を伝えたくないと考えることが一般的と思いますが、丸林さんのように、自ら銀行に対して積極的に説明を行い、銀行に隠しごとはないと認識してもらうようにすることが最善の対策だと、私は考えています。