鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

運転資金として受けた融資の流用

[要旨]

運転資金の融資を受けた資金で、設備を購入した場合、早晩、銀行はそれに気づきます。ただ、銀行としては、運転資金という使途が漠然としているために、資金流用について融資相手に問うことはあまりないと思われますが、次回以降の融資を受けるときの審査には悪影響が出るでしょう。


[本文]

先日、セーフティネット保証で運転資金として受けた融資の資金が残っているので、設備を購入するとまずいのか、という質問を受けました。回答は、避けた方がよいのですが、実際には、融資が延滞しなければ、銀行から約定違反を問われることはあまりないと思われます。

ところで、運転資金として受けた融資資金で、設備を購入した場合、そのことを銀行は分かるのかというと、多くの場合は、銀行は気づきます。例えば、A銀行で運転資金の融資を受けているので、A銀行には分からないようにするために、B銀行の預金口座に入金になった売上金から、預金を引き出し、設備を購入したとしても、結果として、A銀行はそれに気づきます。

なぜかというと、銀行は、融資相手から提出してもらう財務諸表で資金運用表を作成し、融資がどのように利用されているかを把握できるからです。(資金運用表で、なぜ、融資がどのように利用されているのかを把握できるのかということについては、拙著、「図解でわかる小さな会社の経営に活かす会計いちばん最初に読む本」に詳しく解説してありますので、ご関心のある方は、同書をお読みいただけると幸いです。)

ただ、このような資金流用は、相当に悪質ではなく、また、融資が延滞していなければ、前述したとおり、約条違反であることを、銀行が融資相手に実際に告げることはあまりないでしょう。なぜなら、「運転資金」という言葉が漠然としているため、融資を受けた直後に、融資金の入金になった口座から資金が引き出され、機械などが購入されたというようなことが行われていなければ、銀行としても資金流用を指摘しにくいという事情があります。

ただ、銀行は、融資相手を信用して融資を行っているわけですから、それに反して、資金流用をすることが頻繁に行われていれば、銀行がそのことを口に出していなくても、その会社は銀行からの信頼を失い、新たな融資を受けるときに悪影響が出ると思います。そこで、もし、設備を調達したいということになった場合、銀行から改めて設備資金の融資を受けることが望ましいでしょう。

もし、設備資金の申し込みをして、既存の融資が多いために、新たな融資を行うことが難しいと銀行から回答された場合は、余裕のある手許資金で既存の融資の一部を返済することを条件にすれば、設備資金の融資を受けることが可能になるでしょう。

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