[要旨]
個人事業主よりも、法人の方が、事業活動のために使われる資産や負債が明確になっているため、銀行の融資審査においては承認を得やすくなると言えますが、経営者が公私混同によって、「会社と経営者の財布が同じ」という状態になっていると、その利点を活かすことができません。
[本文]
経営コンサルタントの赤沼慎太郎さんが、法人と個人事業主では、どちらが融資を受けやすいかということをお話しておられました。(ご参考→ https://youtu.be/-kMXo-nwi-s )赤沼さんのお話を要約すると、業績が同じであれば、法人の作成する財務諸表などの資料は、個人事業主のそれよりも詳しく作成されるので、法人の方が融資の承認を得やすいだろうというものです。
私も、これに関しては、赤沼さんと同じ考えを持っています。但し、これは、赤沼さんも述べておられましたが、融資の可否の判断は、業績が最も重要な要素なので、仮に、業績があまりよくない個人事業主が、会社を設立し、法人として事業を営んだとしても、融資の承認が得られやすくなるのかというと、それは見当違いな対策と言えます。
もうひとつ、私が注意すべきことと考えていることは、融資承認を得るにあたって、法人の方が有利であるという理由は、事業のための資産や負債が明確になっているということです。これは、個人事業主では、それが分からないということではありませんが、法人は、事業のためだけに資産と負債を持っているわけですから、相対的に財務分析をしやすいということは事実でしょう。
しかし、せっかく、会社を設立したにもかかわらず、事業のために使われるべき会社の資産や負債と、事業活動とは直接的に関係のない経営者の資産や負債を、「同じ財布」にしてしまっている会社を見ることがあります。例えば、ほとんど、経営者の私的な目的にしか使っていない乗用車や住宅などを、会社名義で所有するということがあります。(この件については、どこからどこまでが妥当かということを、明確に線引きすることが難しい面もありますので、ここではあまり詳細な点について言及はしません)
そのような会社は、「会社の資産や負債は純粋に事業のために利用されている」という、融資審査にあたっての法人の利点を得られないことになります。さらに、この記事の本旨からずれますが、そのような会社は、銀行から見て、経営者の姿勢に疑問を持たれたり、融資に関する経営者の個人保証の解除の交渉をするときに、悪い影響を与えることになります。話を戻すと、これは基本的なことですが、民間会社であっても公器であると考え、公私混同は極力避けることが無難です。