[要旨]
事業の改善方法を見つけようとしている経営者の方は少なくありませんが、その多くは、改善方法が見つからないからではなく、本当にやらなければならないことを避けようとしているためと考えられます。
[本文]
私は銀行職員、および、中小企業診断士として、中小企業の事業改善のお手伝いに長くたずさわってきましたが、実は、ご相談を受けた会社のどこを改善すればよいのかということを見つけることは、それほど難しくはありません。それは、ご相談される経営者の方には失礼ながら、わざわざ相談するまでもないくらい、容易なことです。詳しくは後述しますが、事業の改善策のほとんどは、経営者の方がやりたくないことをやればよいというものです。といいつつ、私も、他人のことをあまり批判できません。
私は、毎年、人間ドックで、肥満を指摘されます。では、なぜ、私は肥満を治すことができないのでしょう?肥満を治す方法が見つからないからではありません。単に、運動をしなかったり、食べ物を改善しなかったりするだけです。要は、やらなければならないことから逃げているだけで、最終的には、本当に健康になりたいと思っているかどうかというところに行きつきます。とはいえ、私の身体の改善と、中小企業の事業の改善を、同じテーブルで論じるつもりはありません。身体の改善の方が、事業の改善よりも容易であることは間違いありません。
ただ、ここで事業改善について言及した理由は、探すまでもない事業の改善方法を、懸命に探そうとしている経営者の方が、意外と多いと感じたからです。例えば、銀行からの借入を円滑に行いたいと考えている経営者の方が、銀行との上手な折衝方法について学ぼうとしていることは、まま、見られます。しかし、私は、これはあまり得策であるとは思いません。
銀行との折衝方法を学ぶより、その労力や時間を、売上や利益を得ることのために振り向け、業績が改善して行けば、自ずと銀行からの支援を得ることができるようになります。すなわち、表面的には「事業改善の方法を探す」ということにしつつ、本当は、やりたくないことから逃げてしまっているのだと思います。といいつつ、前述の通り、私も、やりたくないことから逃げているので、まず、自分自身を改めたいと思います。