鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

成長そのものを目標にすることはまちがい

[要旨]

ドラッカーは、会社の事業の成長を目標にせず、よい会社をつくることを目標とすべきと指摘しています。会社を成長することも大切ですが、それだけでは会社の基盤は脆弱になってしまうので、高いマネジメントスキルが求められるものの、よい会社をつくることが、経営者に求められる真の役割です。


[本文]

経営学者のドラッカーの代表的な著作の、「マネジメント」のエッセンシャル版の260ページに、気になることが書かれていました。「成長そのものを目標にすることはまちがいである。大きくなること自体に価値はない。よい企業になることが正しい目標である。成長そのものは虚栄でしかない」このように、ドラッカーは、事業を拡大することよりも、経営の品質を求めるべきと説いています。

そして、その理由として、次のように述べています。「長期にわたる高度の成長は不可能であり、不健全である。あまりに急速な成長は組織を脆弱化し、マネジメントを不可能にする。それらの欠陥のために、ちょっとしたつまづきが致命傷になる」事業が急成長した会社は、不安定であり、ちょっとしたことで活動が止まってしまうということは、心あたりのある方が多いと思います。このように、ドラッカーの指摘は、多くの方が理解できると思います。

ところが、経営者の方の中には、会社の事業の成長を、最優先にする方が多いとも、私は感じています。そのことも理解できなくはありません。会社の事業が成長することは、経営者としてうれしいことです。ただ、成長だけしても、事業が継続できなければ、意味はないでしょう。ですから、ドラッカーは、成長することよりも、よい会社になることを目標にしなければならないと言っているのでしょう。

また、成長だけを求めてしまいがちな、もうひとつの要因は、会社をよくすること、すなわち、質の高いマネジメントを実践することが難しいということの挙げられるでしょう。しかし、マネジメントのスキルを習得し、自社をよい会社することができれば、会社の事業を長期的に継続させることができ、そうなれば、事業が成長する機会は何度でも得られるでしょう。極めて当然のことなのですが、ドラッカーの本を読んで、その大切さを改めて感じました。

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