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完成後の商品だけを評価してもらうだけでなく、商品を提供するまでの過程を顧客に見てもらい、その過程を評価してもらうことで、商品の価値を高める事例が増えているようです。これからは、商品の競争力を高めるためには、過程も評価の対象になるという観点が大切になるでしょう。
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日経クロストレンドに載っていた、プロセスエコノミーに関する記事を読みました。プロセスエコノミーとは、端的に述べると、「プロセス(過程)から収益を得ること」ということだそうです。そして、プロセスエコノミーの事例として、5月に東京都港区台場にオープンした、「世界一透明なドミノ・ピザ」を紹介しています。「『見て楽しい、見えて安心』をコンセプトに持つ同店は、冷蔵庫、キッチンなどが見えるように、店舗の大部分がガラス張りになっているのが特徴。ピザの生地作り、調理、焼き上がる瞬間、配達に出るまでの一連の様子が外からも見られる。
さらに、店内に設置した3台のWebカメラで、ピザ作りの工程をオンラインで配信、店舗の営業中は常時、ドミノ・ピザのWebサイトでピザの生地作りや焼かれている様子、従業員がピザを切り分けて箱詰めする様子など、臨場感のある動画が配信されている。また、店舗内には大型のモニターを設置し、受注件数や配達状況を表示。まさしく宅配ピザのプロセスをすべて見える化した究極形だ。顧客が抱きがちな、『ピザは冷凍されているものを解凍しているだけではないのではないか』、『ピザはレンジで適当に温めているだけではないか』といった不安を払拭し、信頼の醸成を狙う」
完成後の製品では、味や見た目だけでしか評価されませんが、プロセスを公開することで、エンターテインメント性や、信頼性を打ち出し、同社製品の価値や競争力を高めているということが分かります。とはいえ、意識しているかどうかは別として、プロセスエコノミーに当てはまるような活動は、すでに、多くの会社で実践していると思います。例えば、丸亀製麺は、セントラルキッチンで製麺せず、店舗効率を犠牲にして、あえて店舗ごとに製麺機を客席から見えるところに置き、できたてのおいしさを提供しようとするお店の意図を強調しています。
このようなプロセスエコノミーの考え方に基づく事業は、「商品」を顧客にどう評価してもらうかという工夫のひとつと言えると思います。商品は、単に、顧客に引き渡してから評価してもらうというだけでなく、引き渡す前の過程を見てもらって評価を得ようという新たな観点を販売活動の改善に加えることは、競争力を高めることになるでしょう。
2021/10/21 No.1772