[要旨]
経営者も含め、人はどうしても矛盾したことを行いがちですが、そのようなことを減らしていくことは、経営環境の複雑化している時代においては、効果が大きいと考えられます。
[本文]
先日、在庫管理担当者は、営業部門からは在庫を増やせと要請され、製造部門や経理・経営部門からは在庫削減を求められるという相矛盾する要求を出され、ダブルバインドを受ける状態になることが、しばしば起きるということを書きました。この、ダブルバインドはよくないということは誰でもわかるのですが、人は強く意識していないと、自己矛盾を見逃してしまうことがあります。
私も、健康的な体を持ちたいと思いつつ、定期的な運動も面倒と考えています。このような都合のいい考えは、単に、私が不精なだけなのですが、一般的に、人間には限界があるので、自己矛盾を100%取り除くことも難しいでしょう。でも、このダブルバインドが、会社の中で起きないようにしようという観点で改善のアプローチを行うことは、私は効果があると考えています。
例えば、経営コンサルタントで、ダスキン武蔵野を運営している小山昇さんは、メールマガジンで、次のように書いておられます。「わが社は、草野球チームのような状態であり、隣町のチームに勝ちたいとは思っていても、プロ野球選手のような、シビアな練習に耐えてまで試合に勝とうとはしていない。
仮に、ドラフト候補にあがるような選手をチームに迎えたとしたら、他の選手は、自分のポジションが奪われるのではないかと考え、戦々恐々として、野球を楽しむことができなくなる。中小企業もこれと同じで、高望みをして、優秀な人材を雇い入れることをせず、『ぼちぼち』の実力で揃えた、似たもの同士で和気あいあいとやっていくのがよい」というものです。
一般的に、経営者の方は、優秀な人材を獲得したいと考えがちですが、実態は、優秀な人材を活用できる体制も整っていないという会社は少なくないでしょう。そうであれば、小山さんのいうとおり、優秀な人材に頼るよりも、和気あいあいとした職場づくりに取り組むことの方が、よい結果に結び付くでしょう。この例は、ひとつの例に過ぎませんが、私は、ダイナミックな戦術・戦略よりも、ダブルバインドをなくすというような静的な戦略の方が、経営環境の複雑化した時代に適していると考えています。