[要旨]
会社の中には、単に、指示に従うだけの部下は少なくありませんが、組織としての目的を理解した上で活動できるようにしなければ、組織的な活動はできません。そして、経営者には、部下に、組織の目的を理解できる能力を養成するという、重要な役割があります。
[本文]
ビジネスメールコンサルタントの平野友朗さんのメールマガジンを読みました。要旨は、「上司から、外出せずに営業活動を行うために、サンプルメールを参考にして、100件の会社に営業メールを送れという指示を受けたとき、100件の営業メールを送ることをゴールにする部下は、仕事のパーツの一部でしかなくなる。しかし、100件のメールを出す作業をしながら、上司の真の意図を汲み取り、顧客の反応を得るための工夫を繰り返していく部下は、上司から評価され、さらに難易度の高い仕事を与えられるようになるでしょう」というものです。
私は、この平野さんのメールマガジンを読んで、ドラッカーの主著である「マネジメント」に書かれていた、3人の石工の話を思い出しました。すなわち、「ある建築現場で、何をしているのかを聞かれた3人の石工のうち、1人目の石工は、『これで暮らしを立てている』と答えた。2人目は手を休めずに『腕のいい石工の仕事をしている』と答えた。3人目は目を輝かせて『国で一番の教会を建てている』と答えた」というもので、有名な逸話です。
これに関し、ドラッカーは、1人目の石工はマネージャーにはなれないが、3人目の石工はマネージャーと言える。2人目の石工は、技能は持っていたとしても、組織全体のニーズと関連があるということを理解しなければならない、と述べています。平野さんの指摘も、ドラッカーの指摘も、どちらも、組織の構成員は、個人の視点だけではなく、組織としての視点も持たなければ、組織的な活動の成果は得られないということに行きつくと私は考えています。
そして、そのような視点をもつ人たちが集まるからこそ、組織が組織らしい活動ができるようになるのでしょう。では、どうすれば、部下たちにそのような視点を持ってもらえるようになるのかということについては、今回は割愛しますが、経営者の方は、単に、部下に、やることの指示を出すだけではなく、組織としての視点も持ってもらえるよう働きかけるという重要な役割を担っています。