鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

ビジネスでの婉曲表現はタブー

[要旨]

会社法の定義する公開会社は、その条文の表現が分かりにくいため、勘違いされることがあるようです。しかし、婉曲表現は、伝える相手が誤って理解する可能性が高くなるので、ビジネスでの指示などでは、避けることが無難です。


[本文]

2006年に施行された会社法で、「公開会社」というものを定義されたことは、多くの方がご存知でしょう。かつては、公開会社というときは、「証券取引所に株式を公開している会社」、すなわち、上場会社を指していましたが、会社法では、それよりも広い意味で株式を公開している会社を指しており、会社法の定義する公開会社が、必ずしも上場会社とは限りません。

具体的には、公開会社は、株式に譲渡制限のない会社で、公開会社でない会社(法律で定義されている言葉ではありませんが、株式譲渡制限会社、または、非公開会社と呼ばれることもあります)は、株式に譲渡制限がある会社です。これは、会社法の条文では、「その発行する全部、又は、一部の株式の内容として、譲渡による当該株式の取得について、株式会社の承認を要する旨の、定款の定めを設けていない株式会社」(第2条第5項)と規定されています。

この条文を、私が初めて読んだときは、とても分かりにくい文章だという印象を受けました。事実、この条文を読み、「株式のすべてに譲渡制限がない会社が公開会社である」と解釈してしまう人も多いと聞いています。そう解釈してしまう人は、「すべて、または、一部の株式に譲渡制限を定款で定めている会社は、株式譲渡制限会社であり、そうでない会社は、公開会社である」と、理解してしまうのでしょう。

しかし、一部の株式に譲渡制限の定めがない会社とは、裏を返せば、一部の株式は自由に譲渡できる会社ということであり、そのような会社は公開会社であると、第2条第5項に書かれているのです。すなわち、1株でも自由に譲渡ができる会社は、会社法の定義する公開会社です。法律は、分かりやすさよりも、正確さが優先される文章で書かれるので、このような表現になってしまうことは、仕方ないのでしょう。

でも、ビジネスでは、分かりやすさを優先しなければならないことが、圧倒的に多いと思います。例えば、「●●しないとは考えていない」とか、「●●することはできないわけではない」など、二重否定の表現は、それを聞いた相手には、勘違いされやすいと思います。

もちろん、二重否定には、それなりのニュアンスがあるので、そのような用法を使いたくなる場合があることは理解できます。私も、あえて、「●●は少なくない」などの、二重否定を使うことはあります。ただ、それは、相手にじっくり考える時間があるときに限っており、普段の会話などでは、婉曲表現は避けることが無難ではないかと考えられないわけではありません。あらためます。ビジネスでの婉曲表現は避けましょう。

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