[要旨]
西郷隆盛は、税金を安易に増やすと、国民が苦しみ、納税を逃れようとし、さらに、国が分裂してしまう可能性があると説いています。これは、会社の運営についてもあてはまり、従業員の方に、無理なことを強いると、会社や経営者から心が離れ、事業が立ち行かなくなるでしょう。
[本文]
旧出羽庄内藩の関係者が西郷隆盛から聞いた話をまとめたものと言われている、「南洲翁遺訓」を読みました。その中で、国の財政に関して書かれた、第13条に、私は大きな関心を持ちました。「租税を薄くして民を裕(ゆたか)にするは、即ち国力を養成する也。故に国家多端にして財用の足らざるを苦むとも、租税の定制を確守し、上を損じて下を虐(しい)たげぬもの也。
能く古今の事跡を見よ。道の明かならざる世にして、財用の不足を苦む時は、必ず曲知小慧(きよくちしようけい)の俗吏を用ゐ巧みに聚斂(しゆうれん)して一時の欠乏に給するを、理材に長ぜる良臣となし、手段を以て苛酷に民を虐たげるゆゑ、人民は苦悩に堪へ兼ね、聚斂を逃んと、自然譎詐狡猾(きつさこうかつ)に趣き、上下互に欺き、官民敵讐(てきしゆう)と成り、終に分崩離拆(ぶんぽうりせき)に至るにあらずや」
これについては、西郷の故郷、鹿児島の放送局である、南日本放送のホームページに解説があります。すなわち、税金は少ない方が国は豊かになるから、官僚は、むやみに法律を変え、税金を上げるようなことをしてはならない。昔から、無理に税金を取り立てる官僚が、優秀な官僚と言われたりするが、それは誤りだ。官僚が無理に税金をとろうとするから、国民が嘘をついたりだましたりするようになり、最終的には国が分裂するまでになってしまう、というものです。
私は、この西郷の考えは、その通りだと思いますが、同時に、そのことは、私がここで引用するまでのことではありません。ここに引用した理由は、国を組織と考えたとき、どのようにバランスをとることが大切かということが分かる教えであり、他の組織にもあてはまる考え方だと思ったからです。
例えば、国を会社、官僚を経営者、国民を従業員、税金を労働力に例えてみます。すなわち、事業がうまくいかないからといって、経営者が、従業員にたくさん働かせようとしたら、従業員の心は、会社や経営者から離れ、早晩、会社の事業は立ち行かなくなるでしょう。
西郷の教えは、理解に難しくないことなのですが、ついつい起きがちなことです。確かに、西郷の教えを実践することも難しいですが、だからこそ、リーダーたる官僚や経営者の役割は、誰にでもできるものではない、やりがいのある仕事でもあるということでしょう。