鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

コミットメントラインによるアピール

[要旨]

コミットメントラインは、銀行から融資を受ける予約をするという契約ですが、それだけでなく、自社が銀行から支援を受けることができるということをアピールできることにもなります。


[本文]

帝国データバンクの阿部成伸さんが、ダイヤモンドオンラインに、コミットメントラインについて寄稿していました。阿部さんによれば、「2020年1月から9月までにコミットメントライン契約の締結を発表した上場会社は165社、総契約金額は3.1兆円となり、前年同期と比較すると、件数は4.7倍、金額は9.5倍に急増している」というものです。この中には、大きく報道された、トヨタの1.25兆円の契約が含まれていると思われますが、このような、コミットメントラインの契約が急増した背景には、コロナ禍による経営環境の悪化があることはいうまでもありません。

ちなみに、コミットメントラインとは、「会社と金融機関が契約を結び、『あらかじめ設定された期間(通常1年間)』、かつ、『契約額内』であれば、審査手続きを経ることなく、融資を受けられる約束(コミット)をする契約で、金利とは別に手数料がかかるものの、必要に応じたスムーズな資金調達が可能になる」、特別な契約のことです。このように、今年は、トヨタのような優良な会社でさえ、つぎつぎと、銀行とコミットメントラインを契約する報道が相次ぎ、それまでは、その役割が低下しつつあると考えられていた銀行が、再び、脚光を浴びつつあると、私は、考えています。

さらに、前述したとおり、コミットメントラインは、直接的な融資契約ではなく、融資をしてもらうことを約束する契約であることから、その契約をすること、そして、それを報道機関などを通して広く公にするということは、「当社は、経営環境が悪化しているが、銀行から支援を受けられる約束を得たので、安心して取引して欲しい」というアピールをすることにもつながります。このように、銀行は、融資をしてもらうだけでなく、自社に支援をするという姿勢を示してもらえるという面でも活用することができます。

ちなみに、クレジットラインは、通常は、数十億円以上で契約され、実質的には、上場会社かそれに準ずる会社でなければ利用できません。そこで、中小企業の場合、クレジットラインに代わるものとして考えられる契約は、現在、注目を浴びている、資本性ローンであると、私は考えています。もし、銀行から資本性ローンの契約を受けることができれば、単に、資本性ローンの契約額の資金調達ができるというだけでなく、自社が銀行から強い支援を受けているという対外的なアピールができることになるでしょう。

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