鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

マイクロファイナンスの金利

[要旨]

事業は、顧客に有利な条件で行おうとする経営者が少なくないものの、過度に、顧客に譲歩してしまうと、事業そのものが継続できなくなるので、事業が継続できるような収益が得られる条件で事業を行うことも大切です。


[本文]

バングラディシュの経済学者である、ムハマド・ユヌス氏は、1983年に、同国の首都、ダッカグラミン銀行を設立し、貧困層を対象にした無担保融資である、マイクロファイナンスを行って来ました。この活動は、社会的に高い評価を受けており、2006年には、ユヌス氏が、ノーベル平和賞を受賞したことから、一躍、多くの人が知るところとなりました。

ところで、このマイクロファイナンスを利用するときの金利はどれくらいか、ご存知でしょうか?20%以上だそうです。(ご参考→ https://bit.ly/3kZ9lG9 )弱者を助けるための融資の利率が、20%以上ということを知ったときは、私も、少し意外に感じました。とはいえ、バングラディシュのインフレ率が10%くらいであることや、小口融資を行うためには、ある程度の事務コストが必要ということを考えると、それほど高いとは言えないかもしれません。

そして、この金利について私が注目したことは、マイクロファイナンス事業を継続するために、きちんと採算の得られる金利で融資を行い、確実に利益を得ることで、事業を持続可能にしているということです。もし、無理をして低金利で融資をしてしまうと、マイクロファイナンスの事業の継続そのものが難しくなり、かえって、貧困層がさらに困ることになってしまいます。(ただし、マイクロファイナンスには、一定の要件のもと、無金利の融資も行われているそうです)

すなわち、マイクロファイナンス貧困層に役立つためには、なるべく低金利であることが望ましい一方で、逆に、金利が低すぎると、こんどは、事業の継続が難しくなるので、両者のバランスが大切ということです。そして、むしろ、事業が成り立たず、継続できない事業は、最初から始めない方がよいと、私は考えています。これは、少し厳しい言い方のようにも思えますが、無理な事業を始めて失敗するのなら、最初から事業を始めない方が、損失は少なくてすみます。

このように書くと、「やってみないと分からないこともあるし、起業とは、ある程度は、失敗することも許容されるものではないか」と反論する方もいると思います。しかし、私の経験から感じることは、そのような主張をする人は、実は、事業を始めることが目的化していて、精緻な事業計画を作成することさえしていません。そして、反対者の意見を押し切ろうとするときに、前述のようなフレーズを口にします。

確かに、実際に事業に着手してからわかることもあるし、成功すると思って始めた事業が、結果として失敗してしまうこともあります。しかし、有能な経営者は、少なくとも、新たな事業を始めるときの判断は、ギャンブルをするときのような判断はしません。ある程度は、多くの賛成者が得られる状態にして、新たな事業を始めています。

話をもどすと、単に、「融資利率は低い方がよい」というような、利用者に有利な条件だけが、利用者にとってこのましいということではないと、私は考えています。商品やサービスを利用する側と、提供する側の、両者が共存できるところで折り合いをつけることが、最も望ましいことであり、その絶妙なバランスがとれるところを見つけることが、経営者の腕の見せ所であると、私は考えています。

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