鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

市場に合わせたビジネスモデルの変更

[要旨]

マーケティング戦略は、さまざまなマーケティング活動の組み合わせ、すなわち、マーケティングミックスが重要であり、価格、性能だけでなく、ビジネスモデルも含めた、最適なマーケティングミックスを見出すことが経営者の方に求められます。


[本文]

先日、早稲田大学ビジネススクール教授の山田英夫さんが、ダイヤモンドオンラインに、エプソンのプリンターのマーケティング戦略について寄稿しておられました。要旨は、エプソンのプリンターは、本体を低価格で販売し、その代わり、消耗品のインクカートリッジで利益を得るという、ジレットモデルを採っているが、インドネシアでは、プリンター事業は赤字となっていた。


インドネシアでは、違法な製品である、外付けインクタンクが販売されていたため、エプソン純正のインクカートリッジが売れなかったためだ。これに対して、エプソンは、法的措置をとらずに、インク容量の大きい新製品を開発した。その結果、エプソンの新製品は、コストパフォーマンスが高く、故障もしなかったため、時々故障していた違法な外付けインクタンクを市場から駆逐し、プリンが事業は黒字化した、というものです。

ちなみに、前述のジレットモデルは多くの方がご存知と思いますが、改めて説明すると、カミソリを製造していた米国のジレット(2005年にP&Gが吸収合併)が、かつては一体となっていた、柄と刃を別々に売るようにしたというビジネスモデルです。このモデルでは、同社のカミソリのユーザーは、最初に柄と刃をセットで買い、その後は、一体型よりも安い刃だけを買い直せばすむので、同社製品のシェアが拡大したというものです。

話をもどすと、インドネシアエプソンのプリンターのユーザーが、最も重視することは、コストパフォーマンスだったので、同社は、コストパフォーマンスでは劣るジレットモデルは、同国では適さないと判断し、コストパフォーマンスが高い、インク容量の大きい新製品を開発したわけです。

製品が売れるためには、価格、性能など、さまざまな要因がありますが、同社は同国に適するビジネスモデルに転換したという点は、経営者の方の判断が優れていいると感じました。マーケティング戦略は、さまざまなマーケティング活動の組み合わせ、すなわち、マーケティングミックスが重要であり、最適なマーケティングミックスを見出すことが経営者の方に求められます。エプソンの事例は、そのよいお手本になると思います。

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