[要旨]
人は、他人の行いの悪い面には気づきやすいものの、無意識に自分自身も同様のことをしていることがあるので、特に、部下たちを導く立場にある経営者の方は、そのような人間の性質を意識して、部下に臨むことを自分自身が率先垂範するようにしながら経営に臨むことが大切です。
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浄土真宗本願寺派僧侶の江田智昭さんの、ダイヤモンドオンラインへの寄稿を読みました。要旨は、神奈川県のドラッグストアの店員の方が、「コロナよりも怖いのは人間だった」とTwitterへ投稿し、大きな反響があった。この投稿については、多くの人が傍若無人な振る舞いをする「他人」の姿を瞬時にイメージし、自分も「人間」のはずなのに、無意識に自分自身をそこから除外し、「コロナよりも怖いのは他人だった」と心の中ですり替えてしまう。
ところで、親鸞聖人は、「愚禿(ぐとく、親鸞聖人のこと)が心は、内は愚にして外は賢なり」(私の心の内面は愚かでありながら、外見は賢く振る舞っている)ということばを残しており、親鸞聖人自身も、心の中では愚者の面があるという自覚があったようだ。したがって、現在は、インターネットなどで非常に多くの情報を蓄えることができるようになったが、知識を増やして外見を賢そうにすることよりも、自分自身の心の内面の愚かさに気づくことが大切だ、というものです。
そこで、この記事を読んで、私が最初にすべきことは、私自身の内面の愚かさを自覚することだと、あらためて認識しました。そして、自分が他人に望むことは、まず、自分自身が実践しなければならない、すなわち、率先垂範していかなければならないと思います。ところで、いま、テレビドラマの「半沢直樹」が高い人気を得ていますが、その理由は私が言及するまでもなく、勧善懲悪のストーリーだからでしょう。
私も、かつて、銀行で働いていたこともあり、強い関心をもってこのドラマをみています。正直なところ、銀行に務めていた当時は、半沢直樹のような上司がいれば、倍返しをしてもらいたいと思うような相手がいました。その一方で、自分自身も、当時の部下などに対して、「倍返ししてやりたい」と思われるようなことをしていなかったかと、省みてもいます。テレビドラマでは、分かりやすくするために、登場人物の善悪が明確に分かれていますが、現実の社会では、同じ人が、上司から理不尽を強いられることもあるし、部下に理不尽を強いていることもあると思います。
よく、「風通しの良い企業風土」を推奨されることがありますが、それを真に実現させるためには、親鸞聖人の「内は愚にして外は賢なり」の考え方を、すべての人が意識する必要があると思います。前述の親鸞聖人の教えからは、他にも多くの学ぶべきことが見いだされると思いますが、今回は、私の過去の経験から、ひとつだけ例を挙げてみました。