鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

リスク管理としてのメインバンク取引

[要旨]

自社がピンチになってから銀行に支援の依頼に行くと、すぐに支援を受けられなかったり、支援を断られる可能性もあることから、リスク回避の観点からも、ピンチでないときから、メインバンクと親密な関係を築いておくことが大切です。


[本文]

経営コンサルタント赤沼慎太郎さんが、メインバンクの重要性について、Youtube動画でお話しておられました。私も、これまでメインバンクは重要であるとお伝えしてきました、改めて、メインバンクとは何かということに触れたいと思います。メインバンクとは、文字通りの意味は、自社と融資取引のある銀行のうち、最も融資額が多い銀行のことを指しますが、私や赤沼さんが、メインバンクが重要と考えている理由は、会社がピンチのときに支えてくれる銀行だからです。

ところが、単に、融資取引額が最も多いというだけでは、メインバンクは会社がピンチのときに支えてくれません。普段から、できれば1か月から3か月おきに、銀行を訪問するなどして、支店長や融資課長などと面談し、自社の現在の業況や、これからの事業の方針などを説明した上で、自社の事業の発展のためにはメインバンクの支援が必要であり、協力をお願いしたいということを伝えておかなければ、銀行はメインバンクとしての協力はしてくれません。

ここまでは多くの方にご理解いただけると思いますが、今回、赤沼さんの動画について触れたのは、事業活動に、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた会社が、銀行から融資を受けようとしたとき、メインバンクとしっかりした関係を作ってきた会社と、銀行とは疎遠にしていた会社では、融資を受けるまでの手続きに差が表れているというこをきいたからです。

普段から銀行と親密にしてきた会社は、すぐにセーフティネット保証付融資などを受けたり、リスケジュールに応じてもらえたりしましたが、融資取引はあっても、融資契約をした後、ほとんど銀行職員とも接触してこなかった会社は、ほぼ、純新規と同様の扱いをされ、なかなか融資手続きに応じてもらえなかったこともあるそうです。中には、これまで「当社は無借金で経営する」という方針で、どの銀行からも融資を受けずにきたものの、コロナの影響で融資を受けざるをなくなり、実際に融資を申し込もうと思っても、どの銀行へ行ってどのように手続きをすればよいのか、なかなか要領を得ず、融資を受けるまでにだいぶ苦心したという会社もあるようです。

経営者の方の中には、銀行への定期訪問をすることは面倒と考えている方も少なくないと思いますが、前述の通り、銀行との関係が疎遠になっていると、自社がピンチになってから支援を依頼しても、その了解を取り付けるまでに大きな労力を要したり、支援を断られる可能性があります。すなわち、リスク回避の観点から、会社の業況がよいときから、銀行との良好な関係を築いておくことは大切です。

会社の中には、手元の資金が潤沢なので、銀行から融資を受ける必要はないという会社もあると思いますが、そのような会社でも、現在は、金利が低く、支払利息もそれほど多くないことから、お付き合いの融資取引をしておくと、本当に融資が必要になったとき、円滑に融資を受けられるようになると思います。繰り返しになりますが、銀行は融資を受けるときだけ行けばよいと考えずに、ピンチのときに力強い協力者になってもらえるよう、普段から親密な関係を築いておくことが大切ということを、今回のコロナの影響の中で、改めて感じることができます。

 

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