[要旨]
人材育成は、厳しい方法がよいと考える経営者の方は少なくないようですが、厳しいからといって、必ずしもよい人材が育成できるとは限らないので、厳しいかどうかではなく、正しい方法かどうかで判断することが望ましいと言えます。
[本文]
経営コンサルタントの相馬一進さんのブログを読みました。(ご参考→ https://bit.ly/3ecD23q )ブログの主旨は、相馬さんは子どものころから病弱で、小学生のときは、1か月に1度は風邪をひいて学校を休んでいたそうです。そして、それは、成人してからも続いたそうです。その原因は、相馬さんは、親御さんから厳しく育てられ、その厳しさから逃れるために子どものころは病気になったのに、成人してからも、相馬さん自身が親後さんの価値観を引き継いで、「自分のことを甘やかしてはいけない」と思うようになり、その自分に対する厳しさから逃れるために、病気になり続けていたからだそうです。
しかし、それに気づいた相馬さんは、価値観を変え、「もっと自分のことを甘やかしてもいい」と考えるようになってからは、風邪をひかないようになったそうです。そして、結論として、よい結果は、そこに至るまでの方法が厳しいかどうかによるのではなく、やるべきことをやっているかどうかで決まると述べておられます。私は、この相馬さんの記事を読んで、同じような考え方に縛られている、何人かの経営者の方を思い浮かべました。そのような方たちは、自分自身がとても苦労していまのポジションに至ったので、自分の部下たちにも、自分が経て来たような苦労をさせないと、きちんと育たないと考えている方たちです。
私は、その考え方が、必ずしも間違っているとは思いません。ただ、その一方で、現在は、経営環境の変化が激しいので、かつてのように、厳しい修行を経験させるなど、時間をかけてでも人材を育成する方法が、必ずしも正しいとは限りません。だからといって、私は、コンサルタントとして、私の考え方に顧問先の経営者の方が従うべきとは考えていませんが、経営者の方がよしとする人材育成の方法を、ひとつに限定してしまうことは、相対的に危険になりつつあると思います。
例えば、ミシュランで三つ星の評価を得ている、京都の料亭の菊乃井さんでは、料理の作り方は、料理長から“見て盗め”という伝統的な育成方法を変え、料理人は事務所のパソコンで料理のレシピを自由に見ることができるようにしているそうです。(ご参考→ https://goo.gl/bKE1oy )こうすることで、やる気のある料理人は、ミシュラン三つ星の料亭の店主である村田さんの味をいくらでも覚えることができ、早期に即戦力になっていくそうです。繰り返しますが、私は、部下を苦労させる育成方法が間違っているとは考えていませんが、苦労させることが成功するとは限りません。逆に、部下に楽をさせる育成方法が成功しないこともありますが、楽をさせることが失敗するとも限りません。人材の育成方法は、苦労するかどうかで判断はしない方がよいということを、相馬さんのブログを読んで、改めて感じました。