鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

小規模企業持続化補助金の目的

最近、私がお世話になっている、ビジネスメールコンサルタントの平野友朗さんを始め、何人かの起業家の方から、中小企業を支援するための補助金についてお問い合わせを受けるようになりました。というのも、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた会社を支援するために、ここ数か月の間に、さまざまな補助金が整備されていることから、自社にも利用できるものがあるかもしれないということで、関心が高まっているからだと思います。そこで、今回から、数回にわたって、私の個人的見解が中心になるものの、経済産業省補助金について、解説したいと思います。

まず、今回は、多くの中小企業に利用可能と思われる、小規模事業者持続化補助金を中心に、私が感じていることを述べたいと思います。とはいえ、補助金については、枝葉の部分では異なりますが、幹の部分では共通する点も多いので、他の補助金を利用したいと考えている方にも参考になると思います。具体的な内容に移りますが、小規模事業者持続化補助金(以下、単に持続化補助金と記します)の、公募要領を読むと、違和感を感じる経営者の方も多いのではないかと思います。(ご参考→ https://bit.ly/2SKUL9N )まず、公募要領のページ数は70ページにも及びます。しかも、申請できるのは、補助金の制度名にあるとおり、小規模事業者に限定されています。

この小規模事業者とは、「常時使用する従業員の数が20人以下(宿泊業・娯楽業を除く商業・サービス業は5人以下)の事業者 」であり、すべての中小企業ではありません。このような小規模な会社が、70ページの公募要領を読みこなして応募することは、難易度が高いと思います。しかも、補助金の上限は、通常は50万円(今年開業した会社などの上限は100万円)と、それほど多くなく、専門家の指導を受けると、その報酬で、自社の実質的な補助額は、さらに少なくなります。(申請するために要した、専門家への報酬も、補助の対象になりません)

また、持続化補助金と名前が似ている、持続化給付金は、売上が減少したことを証明する資料を送るだけで給付を受けられるので、それと比べると、持続化補助金の申請に要する労力は大きく異なります。むしろ、持続化給付金の類似の給付金と期待して、持続化補助金を申請しようとしたら、ぜんぜん違うものだったと、がっかりした方もいると思います。では、なぜ、持続化補助金がこのような仕組みになっているのかというと、持続化給付金は、事業活動に新型コロナウイルス感染症の影響を受けた会社を救済することが目的であるのに対し、持続化補助金は、もともとは、やや難易度の高い事業に挑もうとする会社の後押しをすることを目的としていたからです。

かつては、創業補助金という制度があり、新たに創業しようとする人や、既存の会社が新たな事業に進出しようとするときに、その事業に必要な経費の3分の2を補助していましたが、その補助金制度は、持続化補助金に引き継がれ、より強い体質の事業づくりを目指す会社に補助を行ってきました。そして、現在は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けている会社には、補助金採択の審査の際に加点する仕組みとはなっているものの、そもそもの目的が前述の持続化給付金とは異なるので、申請の際に経営計画書等を提出させ、どれくらいの生産性向上が見込めるかを確認することになっています。ここまでの内容をひとことでまとめると、持続化補助金は、基本的に、新型コロナウイルス感染症の影響を受けている会社への救済が主な目的ではないということです。

このように、私は持続化補助金に対して消極的な評価をしていますが、持続化補助金を活用したいと考える方の考えを否定するつもりはありません。この補助金を活用してみようという方は、積極的に申請していただき、補助金で自社の体質を強めていただきたいと思っています。申請のための労力は必要になるものの、むしろ、事業活動を自粛せざるを得ないために、時間に余裕ができた方は、補助金を申請するよい機会ができたと考えることができるのかもしれません。この続きは、次回、説明いたします。なお、この記事の内容は、行政当局の見解ではなく、私個人の見解ですので、ご注意ください。

 

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