鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

別枠のセーフティネット保証の意義

これまで、中小企業のご支援に携わってお

られる数名の専門家の方から、新型コロナ

ウイルス感染症の影響を受けている中小企

業への資金繰支援策としての、セーフティ

ネット保証等について、お問い合わせを受

けました。


そのお問い合わせを受ける中で、気づいた

点がありましたので、そのことについて、

今回、述べたいと思います。


具体的には、信用保証協会の保証額につい

て、セーフティネット保証で2.8億円、

危機関連保証で2.8億円が、それぞれ増

加することについて、どのような意義があ

るのかということです。


これについては、まったくないとは言えな

いものの、それほど大きな意義はないと、

私は考えています。


なぜかというと、中小企業の多くは、信用

保証協会の保証について、限度額2.8億

円(うち、無担保の限度額は8,000万

円)を使い切っていないからです。


なぜ、使い切っていないかというと、その

理由のひとつは、中小企業の多くは、無担

保限度額の8,000万円ほど、運転資金

を必要としていないからです。


少々、粗い説明となることをお許しいただ

きたいのですが、中小企業庁の公表してい

る、平成30年中小企業実態基本調査(平

成29年度決算実績)によれば、調査対象

の中小企業約145万社の1年間の売上高

の平均は、約3.5億円であり、販売費及

一般管理費の平均は、約7,500万円

です。


さらに、調査対象の約88%を占める、1

年間の売上高が5億円以下の会社だけで見

てみると、売上高の平均は約9,600万

円、販売費及び一般管理費の平均は、約

3,600万円です。


実際にはそのようなことは起きませんが、

極端なことを述べれば、多くの中小企業

は、5,000万円の融資を受けられれ

ば、1年間、売上がなくても会社を維持で

きます。


このようなことから、中小企業が、信用保

証協会の保証限度額をすべて利用するとい

うことは、ほとんどないということを、ご

理解いただけるでしょう。


もうひとつの理由は、起業して間もない会

社は、信用保証協会の保証を条件に、銀行

から融資を受ける例は多いということは事

実ですが、事業が拡大してくると、会社に

とっては、より有利な、信用保証のない融

資を受けられるようになるので、信用保証

の利用機会が減って行くということです。


そこで、今般の経営環境の変化によって、

別枠のセーフティネット保証が利用できる

ようになっても、金額的には、一般保証の

無担保保証の限度額の8,000万円の範

囲内で、十分に間に合う会社がほとんどで

あると、私は考えています。


もちろん、金額的には一般保証で十分であ

るとしても、セーフティネット保証等を利

用する意義はあります。

 

例えば、セーフティネット保証の1号~4

号と6号、および、危機関連保証は、責任

共有対象外、すなわち100%保証であ

り、銀行からの融資承認を得やすくなりま

す。


また、保証料率も、セーフティネット保証

は概ね1%以内、危機関連保証については

0.8%以内であり、会社によっては負担

が減る場合があります。


さらに、融資金利信用保証料の補助を受

けることができる自治体の制度融資は、

セーフティネット保証や危機関連保証の保

証を利用することが条件となっていること

があります。


(ただし、まだ詳細な条件は明確になって

いませんが、今回の新型コロナウイルス

染症の影響を受けた会社については、政府

の補助で、融資額3,000万円を限度

に、当初3か年分の利子補給を行い、さら

に、セーフティネット保証4号・5号、危

機関連保証について、融資額3,000万

円を限度に、一定の要件の下、保証料の全

額、または、2分の1を減免することにな

るようです)


最後に、今回、私が、信用保証の限度額に

ついて説明した理由は、制度としての信用

保証額を大きくすることよりも、保証を利

用しようとする会社の状況が、どの程度で

あれば保証をするのかということの方が大

切だと感じているからです。


いま、多くの会社が保証の申し込みをして

いて、承認が得られるまで時間を要してい

るということを考えると、モラルハザード

などの弊害はあるもの、かつて実施された

ネガティブリスト方式の緊急保証制度と同

等の制度を設けることの方が妥当であると

私は考えています。

 

 

 

※この記事はメールマガジンでも配信して

います。ぜひ、ご登録ください。→

http://yuushi-zaimu.net/conference/

 

 

 

f:id:rokkakuakio:20200413202030j:plain