鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

減損会計の柔軟な適用

先日、新型コロナウイルス感染症により事

業活動に影響を受けている会社に対する、

減損会計の適用に関し、「金融庁は、公認

会計士協会や東京証券取引所経団連、全

国銀行協会などと、会計実務に関する対策

協議会を立ち上げる」と、日本経済新聞

報道していました。


(ご参考→ https://s.nikkei.com/2UG89gG )


報道によれば、「会社は『利益を生む』こ

とを前提に工場やホテル、店舗などを固定

資産として計上しているが、自動車を生産

しない工場や宿泊客のいないホテルは利益

を生まない。


そのため、本来ならば減損処理が必要にな

りかねないが、機械的にルールを適用せず

柔軟に対応することを認めるよう、関係者

で認識を擦り合わせる」そうです。


ここで、「減損処理」という言葉が出てき

ますが、文字数の兼ね合いで詳細な説明は

できませんが、簡単に説明すると、会社の

資産は、将来、その資産を所有することに

よって、その資産の価額以上の資金流入

あると見込まれることが前提になって、そ

の価値があると認められています。


しかし、外部環境の変化などの要因で、そ

の資産によって見込まれる資金流入が大き

く減少した場合などは、その金額に合わせ

て資産の額を減らさなければならないとい

う会計のルールがあります。


それが適用された場合、減少した資産の額

は、会社は、費用として処理(これを「減

損処理」といいます)しなければならず、

そのことによって、会社の利益を減らして

しまいます。


現在の日本の状況では、多くの会社が多大

な影響を受けており、減損会計の厳格な適

用をすると、会社の業績がさらに悪化して

しまうので、他の会社間の取引や、銀行と

の融資取引にも大きく影響してきます。


そこで、前述のように、金融庁は、柔軟な

適用をするよう、関係機関と調整すること

にしたのだと思われます。


私も、金融庁の方針は妥当であると思って

います。


ところで、前述の記事は、上場会社などを

前提にしていると思われます。


なぜなら、中小企業の多くは、減損会計を

厳密に適用していないからです。


とはいえ、銀行は、普段は、融資相手の会

社の資産価値が妥当かどうかを検討しなが

ら融資審査を行っています。


そこで、新型コロナウイルス感染症の影響

を受けている会社に対しては、銀行も、柔

軟な判断をするものと思われますので、こ

の点については、中小企業は安心できるも

のと思います。


ただ、もうひとつ付言したいことは、銀行

が、融資審査をするときに、融資申込をし

た会社の資産価値について、柔軟な判断を

したとしても、実際に、事業が継続しなけ

れば、最終的に、資産を持っている意味は

なくなってしまいます。


そういった意味では、会計ルールの柔軟な

適用は、債権者(銀行)と会社の間だけで

通用するものであり、会社と顧客との関係

においては厳しい状況が続くことに変わり

はありません。


そこで、売上減少などで業績が悪化してい

る会社は、セーフティネット保証を利用し

た融資などで、十分な資金を確保し、事業

の改善のための活動に集中することが、現

在、最も望まれる対応と言えます。

 

  

 

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