鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

預金の質権設定

一般の会社は、商取引をするときに、その

相手から担保を求められることは珍しくあ

りません。


分かりやすい例では、小売業A社が大手卸

売業B社から商品を仕入れるための条件と

して、見込み取引額の2割~3割程度の担

保(具体的には不動産担保)を差し出すと

いうものです。


しかし、金融機関ではない一般の事業会社

にとっては、担保を差し出す側も、受け入

れる側も、担保の契約手続きやその管理の

手間が比較的大きな負担となります。


そこで、よく利用される方法は、金融機関

の保証です。


前述の例では、仕入をするA社が、取引銀

行から保証書を発行してもらい、B社にそ

の保証書を渡します。


そうすることで、B社は、万一、A社から

A社に対する売掛金を回収できなくなって

も、保証額の範囲内で、銀行から売掛金

回収することができます。


しかし、A社にとって、銀行から保証書を

発行してもらうということは、その保証額

の融資を受けていることと同じことになり

ます。


そのことにより、一般の融資が受けにくく

なることもあります。


そこで、銀行に保証書を発行してもらう以

外の方法として、預金の質権設定がありま

す。


この「質権設定」とは、専門的な言い回し

ですが、一般的に言われている質入れのこ

とです。


預金は、約款によって質権設定が禁止され

ていますが、銀行の承諾を得れば質権設定

ができます。


そこで、上述の例では、A社が取引銀行に

預けている預金に、質権設定をする旨の了

解を得てから、預金証書をB社に引き渡し

ます。


預金証書を質として受け取ったB社は、A

社から売掛金を回収できなくなったとき、

他の債権者に優先して、その預金を解約し

売掛金の回収にあてることができます。


この預金の質権設定は、担保契約の一種で

すが、銀行発行の保証書と同様に、B社に

とっては書類を預かるだけなので、比較的

事務負担は少ない保全方法です。


また、A社の取引銀行にとっても、A社と

の預金契約は継続されるので、比較的了解

してもらいやすい方法です。


自社の事業拡大のときは、A社のように、

他社に対しての保証が必要なことがありま

すが、銀行からの保証書発行や、預金の質

権設定などのいくつかの方法があるという

ことを理解しておくと、取引相手との折衝

が行いやすくなると思います。

 

 

 

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