鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

銀行はなぜ融資新規取引に躊躇するのか

先日、経済評論家の上念司さんが、ダイヤ

モンドに、銀行等を批判する記事を載せて

いました。


(ご参考→ https://bit.ly/35NVgEY


これは、以前ご紹介した、信用金庫を批判

する上念さんの記事の続きです。


(ご参考→ https://bit.ly/2pzrXoY


すなわち、「信用金庫から薦められた制度

融資を受けることを断った2年後に、上念

さんへ、あるメガバンクから電話がかかっ

てきて、ファンドラップ(購入する投資信

託の選択を銀行に任せる資金運用契約)を

勧められた。


このとき、上念さんは、融資をしてくれる

なら契約に応じてもよいと答えたところ、

相対融資(制度融資でない融資、すなわち

銀行と単独で契約をするプロパー融資)を

かなりの低金利で契約できた。


ただし、ある程度の金額のファンドラップ

契約と、上念さんの個人保証も融資の条件

となった。


なお、その銀行の担当者は、『2年前の上

念さんの会社の財務状況であっても、弊行

は融資に応じたと思う』と言ってくれた。


引き続き、上念さんの会社の業況は順調で

あり、2年前に制度融資しか薦めなかった

信用金庫は、融資審査の能力がないという

ことを、改めて感じた」というものです。


私は、上念さんの考え方はもっともだと思

いますが、融資をする側の銀行としては、

上念さんの会社からの融資の申し込みにつ

いて、どう受け止めているのだろうという

ことについて考えてみました。


そのひとつは採算性です。


これは上念さんも認めていますが、上念さ

んが融資に成功した要件として、ファンド

ラップが事実上のバーター取引となってい

ます。


上念さんが契約したファンドラップで得ら

れる銀行の利益がどれくらいになるのか、

私には分からないので、代わりに預金で考

えてみます。


例えば、金利1%で1億円の融資をしたと

き、銀行は、1年間で100万円の金利

受け取ります。


(実際の融資契約では、毎月の定例返済が

あると考えられるので、銀行が受け取る金

利は100万円になるとは限りませんが、

ここでは説明を容易にするため、定例返済

はないものとして説明します)


しかし、その会社が3,000万円の当座

預金(預金金利は0%)をしていたとしま

す。


この場合、銀行は、実質的には7,000

万円(=1億円ー3.000万円)の融資

をしているという考え方をするので、その

会社に対する実質的な融資金利は約1.4

%(≒100万円÷7,000万円)とし

て融資を審査します。


融資審査は、採算性も考慮されるので、預

金が多い融資相手は、融資の承認を得やす

くなります。


上念さんの会社の融資取引については、金

額や金利などはまったくわかりませんが、

仮に、金利0.5%で1億円の融資を受け

たものとし、また、上念さんが契約した

ファンドラップから得られる銀行の利益が

年額で50万円とします。


この場合、上念さんの会社との取引から得

られる銀行の1年間の利益は、融資金利

50万円(=1億円×0.5%)と、ファ

ンドラップから得られる手数料50万円の

合計額の、100万円となります。


この場合、上念さんの会社への融資の実質

金利は1%(=100万円÷1億円)とい

うことになり、銀行から見れば、ある程度

の採算が見込めるということになります。


そういう意味では、今回、上念さんの会社

からの融資申し込みに応じた銀行は、採算

がある程度見込むことができたという面で

は、かつての信用金庫よりも、融資承認の

判断をしやすかったと言えます。


もうひとつは、融資をする側は、融資の新

規取引をしようとするときは、ある程度の

決断を必要とすることが実情のようです。


私が銀行に勤務していたときは、新規の融

資相手を探して融資稟議書を申請しても、

信用保証協会の保証を条件としない場合、

50%くらいは承認を得ることができませ

んでした。


上念さんは、融資相手の財務状況がよけれ

ば融資をすべきと主張し、私もそれに同感

なのですが、初めて融資をする相手は、決

算書からは得られない、ネガティブな要因

があるのではないかという判断が働き、信

用保証協会の保証がなければ承認をしにく

いということになるようです。


というのも、銀行は、融資相手の決算書か

ら得られない情報を、通常の融資取引をし

ている中で得るようにしており、その比重

もある程度の大きさがあります。


しかし、初めて融資をする会社の場合、ほ

ぼ、決算書だけで審査をすることになるの

で、それだけで判断をすることは、やや、

難しいというわけです。


だからといって、銀行の融資姿勢が、現状

のままでよいとは私は考えていません。


引き続き、上念さんのような批判を受ける

ことのないよう、銀行はこれからも努力し

ていくことが大切であると、私は考えてい

ます。




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います。ぜひ、ご登録ください。→

http://yuushi-zaimu.net/conference/




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●11月19日ランチ会兼勉強会のお知らせ


11月19日(火)12時00分から、東

京都千代田区秋葉原駅の近くのレストラ

ンで、少人数に限定して、昼食をとりなが

らの融資に関する勉強会を開きたいと思い

ます。

 


■日時:令和元年11月19日(火)

12時00分~14時00分


■会場:和食ダイニングまぐろ問屋十代目

彌左エ門 アトレ秋葉原2店

東京都千代田区神田花岡町1-9

アトレ秋葉原2 4階


JR秋葉原駅昭和通り口を出て、すぐ左側

にあるエレベーターで4階に上がってくだ

さい。


東京メトロ日比谷線をご利用の場合、秋葉

原駅3番出口を出ると、正面にエレベータ

ーが見えます。


地図→ https://bit.ly/2lV8tZO

 

■参加費:1,000円(消費税込み)

当日、会場でお申し受けします。


別途、お食事をご注文し、各自、ご精算く

ださい。


■その他:食事をオーダーするという条件

を満たしていただければ、遅れての参加、

中途での退室は可能です。当日は、ご参加

いただいた方からの質問もお受けします。


■参加申し込み方法:フェイスブックイベ

ントページで、「参加」ボタンを押してく

ださい。→

https://www.facebook.com/events/410138059668211/