鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

銀行の融資業務はサービス業ではない

北海道拓殖銀行OBで、フィンテック

エンスージアストの大前和徳さんの記事を

読みました。


(ご参考→ https://bit.ly/2LbK6ml


私は、この記事に、いくつかの違和感を感

じました。


ひとつめは、大前さんが、ソーシャルレン

ディング(投資をしたい会社(人)と、投

資を受けたい会社を結び付ける事業)を営

む会社を経営していた時、ある大手銀行の

支店長研修の講師を務めたそうです。


そのとき、大前さんは、最近の銀行は融資

の相談に来る人がいないと聴いて、次のよ

うに支店長たちに問いかけたそうです。


「銀行の方が低利で借りられるのに、なぜ

資金需要者は銀行に相談せずに、私のとこ

ろに来ると思われますか?」


これに対し、ある支店長は、「多分、私た

ちが今まで断りすぎたのでしょう」と答え

たそうです。


確かに、銀行は人員削減によって、じっく

りと融資をしている会社の経営者と面談す

ることが減っているとはいえ、この大前さ

んの体験談は、少し脚色していると感じま

す。


なぜなら、もし、金利が高くても、相談し

やすいソーシャルレンディングの会社を資

金需要者が利用するとすれば、現在の銀行

は、低収益に苦しんでいるとは考えにくい

からです。


本当に、資金需要者が金利よりも利便性を

優先するのであれば、銀行はコスト削減を

最優先させず、コストがかかってでも高収

益が見込めるミドルリターンミドルリスク

の融資を伸ばそうとするはずです。


ふたつめは、「金融サービスもサービスと

名がつく以上、顧客に寄り添うサービスで

なければならないはずだが、多くの金融業

従事者は、このことを忘れている。


銀行は特に、顧客に対して上から目線で、

融資審査に必要という理由で様々な書類や

手続きを要求する」と、大前さんが銀行を

批判していることです。


銀行がさまざまな書類を要求することと、

それが銀行の利用者に負担になっているこ

とは事実です。


しかし、そのことは、可能な限り、融資を

受けたい会社の要望(融資額の多さや、金

利の低さ)に応じるために行っていること

であり、要望に応じてもらうには、それな

りの負担がかかることは、ある意味、当然

です。


(ただし、銀行が利用者に要求する手続き

のすべてが、必ずしも必要なこととは限ら

ないのではないかと、私も感じています)


逆に言えば、手続きが簡単な融資は、融資

額が限定されるし、金利も高くなるので、

一方の条件だけを批判することは、不適切

と思います。


そして、大前さんは、アマゾンの金融サー

ビスであるアマゾンレンディングを、次の

ように評価しています。


「アマゾンでは、オンラインショッピング

であろうと融資であろうと、顧客に徹底し

て利便性を提供しようという姿勢を貫いて

いる。


アマゾンレンディングは、このような姿勢

のもとでサービスが設計されているため、

アマゾンに出店する事業者向けに順調に貸

出資産を拡大させている。


日本の資金需要は、アマゾンのような事業

者によって着実に捕捉され、既存の金融機

関から顧客と資産を奪い取っている」


アマゾンレンディングは、アマゾンマー

ケットプレイスに参加している法人販売事

業者に対し、最高5千万円を、最短3日間

で融資をするサービスです。


(ご参考→ https://amzn.to/2YEMV2o


私はこのサービスは画期的と思いますし、

業績を伸ばしている面は評価できますが、

だからといって、この事業は銀行に代わる

役割を果たすとは考えていません。


もし、銀行が、当座の資金需要だけに応じ

るだけの事業であれば、銀行はアマゾンレ

ンディングに凌駕されるでしょう。


しかし、私が以前、述べたとおり、銀行に

はもっと本源的な役割があり、アマゾンレ

ンディングが、その役割を担うことは、現

時点では不可能でしょう。


(ご参考→ https://bit.ly/30jcCps


繰り返しになりますが、銀行の役割が、一

時的に不足する小口の事業性融資に応じる

だけの事業であれば、大前さんの主張は正

しいと思います。


そして、私は、「銀行の融資業務はサービ

ス業ではない」と考えています。


それは、いわゆる利便性やホスピタリティ

は、融資業務では最優先ではないと考えて

いるからです。


会社経営者が、銀行に求めるものは、銀行

職員の言葉遣いが丁寧であるかとか、応対

が親切であるかとか、あまり質問をされず

にすぐに融資をしてくれるとかということ

ではないはずです。


それらの要素も、よい方がよいのですが、

それらよりも会社経営者が銀行に望むこと

は、自社がピンチのときに、銀行が果敢に

自社を支えてくれるかどうかでしょう。


私も、銀行はサービス業としての視点を

持って事業に臨まなければならないと思い

ますが、銀行の評価においては、いわゆる

「サービス業としてのサービス」の良し悪

しを最も重要な要素として評価すべきでは

ないと考えています。

 

 

 

 

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