先日、ある研修会社から、研修講師をして
欲しいとの依頼があったのですが、断りま
した。
6時間で13万円という報酬を提示されま
したが、とても採算に合いません。
単に6時間お話しするだけなら採算ぎりぎ
りですが、研修となると、準備に6時間の
数倍の時間がかかる上に、研修会場までの
往復する時間(前泊する時間も含む)も拘
束されるので、時間単価はとても低くなり
ます。
それに、私の著書を見て、そのテーマで研
修をして欲しいと依頼してきたにもかかわ
らず、その専門家としての評価が報酬から
は感じられません。
ここまでは、報酬の金額について述べてき
ましたが、断った最大の理由は、その会社
は講師をあまり尊重しないという姿勢が伝
わったからです。
私は決して金額だけですべてを判断しませ
んが、その会社からは金銭的な負担を講師
に押し付けようという姿勢を感じました。
とはいっても、今回のテーマは、その研修
会社への不満ではもちろんありません。
付加価値とは何かということです。
ここまでは生意気なことを書いて来ました
が、開業したころの私は、2時間で2万円
の報酬という条件の講師を引き受けたこと
もありました。
準備の時間を考えれば、1時間数千円にし
かなりません。
こういう時の言い訳に、「自分を売り込む
機会になる」というものがありますが、こ
れは強がりに過ぎず、もちろん、その後、
受講者との縁はできませんでした。
そして、そのときの自分がいまの自分がコ
ンサルティングするとしたら、「あなたが
講師をすることによって、どれだけの価値
を生み出していることになりますか」と問
うでしょう。
そう考えれば、1時間1万円の報酬であれ
ば、価値を生み出すどころか、採算割れで
あり、慈善事業と同じです。
別の言い方をすれば、依頼主は講師を評価
するどころか、講師に損害を与えていると
も言えます。
今回の記事の結論は、仕事をする目的は、
付加価値を出すことであり、採算が0かマ
イナスであれば仕事をしたことにはならな
いということです。
ときどき、不採算の受注をして仕事をした
と考えている(またはそう思い込もうとし
ている)経営者(かつての私自身も含みま
す)がいますが、不採算の受注はまったく
価値を生み出すことにはならず、依頼主は
発注相手の仕事を尊重していません。
これは厳しい言い方になりますが、顧客か
らあえて高いお金を払ってでも買いたいと
思ってもらえるような仕事をしなければ、
付加価値を生み出す事業にはならないとい
うことです。
単に仕事を受注して安心するのではなく、
発注者から尊重された上で仕事を受注しな
ければならないという当たり前のことを、
かつての自分は実践できなかったという反
省を込めて、今回の記事を書きました。
繰り返しますが、事業の目的は受注ではな
く、付加価値を生むことです。
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