鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

アイディアを募ることは無責任?

よく、経営者の方が、従業員の方に対し、

「新しい収益機会や事業改善につながりそ

うな、よいアイディアがあったら出して欲

しい」という要望を出すことがあります。


これは、一見すると、ボトムアップでの事

業改善の手法であり、評価できる手法と思

われがちですが、私は、安易に従業員の方

にアイディアを募ることは避けるべきと考

えています。


なぜなら、従業員の方にアイディアを求め

ても、経営者の方が満足するものが得られ

る可能性は低いからです。


その原因は、従業員の方に能力がないとい

うことではなく、従業員の方は経営者の方

のポジションで事業を見る機会を持ってい

ないからです。


言い換えれば、従業員の方は自分の担当の

範囲でしか事業を見ることしかできないの

で、仮に、何かアイディアを出したとして

も、それは、従業員の立場でのアイディア

であって、経営者の立場でのアイディアで

あることは少ないということです。


もちろん、従業員の方が、経営者の方に役

立つであろうと感じた情報や気づきを伝え

たいと思うことがあると思います。


そういった、従業員の方の配慮には耳を向

けるべきですが、しかし、それをそのまま

戦術に採り入れたり、参考にして新たな戦

術をつくったりするときは、いったん、経

営者自身が経営者の観点で齟齬がないかを

確認し、経営者の判断として実践すべきで

す。


ここまでは教科書的なことを書いたのです

が、これは、私の中小企業をみてきた経験

から感じることとして、従業員の方にアイ

ディアを出して欲しいと要望を出す経営者

の方は、実は、経営者自身が、ほとんど事

業遂行に時間をとられ、事業改善をどうし

たらよいかという方法を考える時間がとれ

なくて思案に暮れ、従業員の方に一緒に事

業改善の方法を考えて欲しいという意味で

要望を出していると感じます。


ただし、冒頭でも触れましたが、従業員の

意見に耳を傾けることは必要ですが、経営

者には、会社全体を俯瞰して戦術を採用す

るという、経営者にしかできない役割があ

ります。


ここで私がこだわっている「会社全体を俯

瞰する」というのは、いわゆる会社の組織

や事業を俯瞰するということではありませ

ん。


内部環境である自社の事業や従業員の特色

だけでなく、顧客、仕入先、業界動向、銀

行などの外部環境も含めて判断する必要が

あるということです。


これを言い換えれば、外部環境・内部環境

の全体を見て意思決定を行うという、経営

者本来の役割に軸足を置いていないと、安

易に従業員の方に頼ってしまうことになる

ということが、今回の記事の結論です。


繰り返しになりますが、経営者の方が従業

員の方と話し合うことはよいことではあり

ますが、それだけで会社の方針を決めてし

まうと、偏ったものになったり、効果が低

いものになったりしてしまう可能性が高く

なります。

 

 

 

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