鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

合成の誤謬

先日、ある人がSNSで、「従業員の採用

の条件に大学卒業の学歴を求めておきなが

ら、雇った従業員に支払う給料が、従業員

の子息を大学に通わせられるほどの額でな

い会社はおかしい」という批判をしていま

した。


会社としては、できるだけ少ないコストで

高い能力を持った従業員を採用したいと考

えることは正しいのですが、前述の主張も

社会全体の観点から見れば、筋が通ってい

るかもしれないと感じました。


このような、経済活動において、個々の会

社では正しい活動が、社会全体から見れば

好ましくない結果を招くことを、経済学の

用語で、合成の誤謬(ごびゅう)といいま

す。


この合成の誤謬は、他にも例があります。


例えば、現在の日本では、若年者層で自動

車を所有したいと考える人の数が減ってい

るようです。


これは、自動車業界だけに原因があるとは

言い切れない面もありますが、自らも正社

員の数を減らしたり、雇用者数そのものを

減らしてきたことから、潜在的な自社製品

の顧客を減らすことにつながったという、

皮肉な結果の表れだと思います。


だからといって、私は、会社がコストを減

らそうとする考え方が、直ちに誤っている

とは考えていません。


会社は利益を追求することが目的なので、

自社の利益を最大化しようとすることは当

然です。


しかし、特に日本のような経済成長が鈍化

している状況においては、会社の活動も、

自社だけのことを考えることが、必ずしも

正解とはならなくなってきていることも事

実なのでしょう。


さらに、これからAIやRPAなどが普及

すれば、会社と労働市場の関わり合いにつ

いても、考え方を変えなければならないの

かもしれません。


いま、政府が経済界に従業員の給与水準を

引き上げたり、残業を減らすよう働きかけ

ていますが、個々の会社がこのような活動

に協力的にならなければ、さらに経営環境

を厳しいものにしてしまうでしょう。

 

 

 

 

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