前回の記事で、「役員報酬の低い会社は評
価されない」と述べましたが、今回は、そ
れとは逆に、「役員報酬の高い会社は評価
されない」ということについて述べたいと
思います。
会社の業績がよければ、それに従って、経
営者の報酬は高くなることは当然です。
ただ、いわゆるオーナー会社では、役員報
酬に対して課税される所得税の税率は累進
税率(金額が多くなるにつれて高くなる税
率)であるため、税率が33%となる年間
1,800万円で役員報酬を頭打ちにして
いる例が多く見られます。
一方、法人所得税の税率は一律であり、地
方などを含めた中小企業の実効税率は、約
34%と言われています。
そこで、仮に、経営者が役員報酬として受
け取ったお金も、会社に残したお金も、経
営者の判断で使うことができるものとすれ
ば、個人の所得税が会社の実効税率を下回
る範囲で役員報酬を受け取ることが、個人
と役員のトータルで支払う税額が、最も少
なくなることになります。
話を本題に戻すと、オーナー会社の役員報
酬は、前述のような理由から、あまり高額
にはなりません。
しかし、高額な役員報酬を支払っている会
社も、割合としては少ないですが、存在し
ます。
仮に、役員報酬を支払っても、会社の利益
が黒字であればそれほど問題とは言えない
のですが、中には、利益があまり残らない
状況であったり、赤字になってしまったり
する場合もあります。
そのような、会社を犠牲にしてまで、高額
の役員報酬を受け取る理由は様々なのです
が、代表的なものは次のようなものです。
(1)経営者の趣味に多額の金銭を費やし
ている。
(例えば、高級車、船舶、飛行機、競走馬
などを所有し、また、維持するための費用
にあてている)
(2)子息などを医学部などに入学させる
ために、多額の教育費、寄付金などが必要
となっている。
(3)株式や金融派生商品などに投資をし
ている。
(4)自社の属する業界などとの付き合い
を深めるため、多額の費用が必要になる。
(なかには、いわゆる「使途不明金」など
も含まれる)
銀行は、このような会社に対しては、利益
が安定していれば別ですが、利益が少ない
か赤字の場合は、融資を躊躇します。
その理由としては、会社の事業が不安定と
いうこともありますが、会社への融資が、
役員報酬として経営者に支払われ、実質的
に事業資金以外のことに使われてしまうと
いう状態になりかねないからです。
役員報酬が高いことそのものに直接的な問
題はありませんが、高額な役員報酬が必要
な場合は、それに見合った会社の利益が得
られていることが前提になるということは
言うまでもありません。
また、経営者にとっても、高額な役員報酬
によって、会社の事業が立ち行かなくなっ
てしまえば、経営者にとってもそれは望む
ことではないでしょう。
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