東日本大震災のあとのことですが、私の知
人で、東京都内に本社がある会社の経営者
のAさんが、復興支援のために、宮城県に
頻繁に支援物資を届けていました。
当時の私は、自分のことだけで手がいっぱ
いで、ボランティア活動をするまでの余力
はなく、Aさんには頭が下がる思いを抱く
とともに、Aさんには可能な範囲で協力を
していました。
ところが、そのAさんから、会社の業況が
悪化しており、銀行から受けている融資に
ついて、債権放棄をしてもらうことを考え
ているという相談を受け、とても驚きまし
た。
私は、Aさんのボランティア精神は見習う
べきことと思っていましたが、会社の業況
がよくなかったのであれば、なぜ、会社の
事業改善を最優先してこなかったのだろう
という疑問を持ちました。
そして、Aさんからのご相談を受けた時、
私が銀行に勤務していた時の融資取引先の
経営者であるBさんのことを思い出しまし
た。
Bさんの会社も業況がよくなく、融資の返
済も滞りがちでした。
しかし、秋の商店街のお祭りの時期になる
と、お祭りの準備を自社の事業よりも最優
先していました。
お祭りは商店街の活動なので、1社だけが
加わらない訳にはいかないという事情もあ
りますが、Bさんはしぶしぶ加わっていた
というよりも、積極的にかかわっていまし
た。
このような書き方をすると、「融資がなか
なか返済できないのに、お祭りに夢中にな
ることはけしからん」と私が述べているよ
うに思われるかもしれません。
確かに、銀行から見れば、商店街の行事よ
りも自社のことを優先して欲しいと感じる
面もありますが、融資の返済の問題を除い
て考えても、自社がピンチの状態なのに、
どうしてもっと自社のことに身を入れない
のかということについて、不思議に感じて
いました。
そして、前述の、Aさんから相談を受けた
ときも、Bさんに対する疑問と同じ疑問を
再び感じました。
実は、いまでも、私はAさんとBさんが、
どうして自社のことよりもボランティアや
お祭りのことを優先したのかは、わかって
いません。
そこで、その理由を想像すると、恐らく、
自社の事業改善に正面から取り組むことを
躊躇していたのだと思います。
というのは、事業改善には取り組まなけれ
ばならないことはわかっているものの、も
し、取り組んでみて失敗してしまうと、経
営者としての立場がなくなってしまうこと
を恐れていたのではないかと思います。
かといって、何もしないわけにはいかない
ので、ボランティア活動やお祭りに精を出
していたのではないかと思います。
そして、これは、私が当事者でないから言
えることなのかもしれません。
でも、その一方で、少なくとも、もっと早
い段階から。業績が悪化しないようにする
ための対策をとることはできたのではない
かとも思います。
確かにそれも難しいことなのかもしれませ
んが、経営者の方だからこそ、ピンチへの
備えには常に力を注いでおことが求められ
るのだと思います。
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