日経ビジネス2018年7月16日号に、
鹿児島相互信用金庫理事長のインタビュー
記事が載っていました。
(ご参考→ https://goo.gl/ia71UU )
同金庫では、職員による預金の着服と、不
正な融資が行われており、そのような状況
に至った事情について、理事長がお話しさ
れておられました。
もちろん、稲葉理事長が望んでこのような
ことが起きたとは考えていませんが、実際
には、稲葉理事長の思いが現場には伝わっ
ていませんでした。
その例として、「職員による預金の着服を
防ぐため、生活費に困窮する職員に融資を
する制度も、機能していませんでした。
(中略)(その理由のひとつとして)人事
評価への影響を危惧して制度をそもそも利
用しない職員も多くいました」ということ
があります。
もちろん、これだけが不正の原因のすべて
ではありませんが、マネジメント層では、
制度を作ったことによって安心してしまう
という傾向があると私は感じています。
同金庫の場合、業績をあげることよりも、
不正をしないことを評価するという姿勢を
マネジメント層が見せることが欠けていた
と私は考えています。
例えば、前述の職員向け融資についても、
利用することによって人事評価に影響しな
いということをしっかりと伝えていれば、
より多くの職員の方が職員向け融資を利用
し、預金着服する人は減っていたかもしれ
ません。
また、融資先への実需に基づかない融資実
行も、マネジメント層がプロセスを見ない
で結果だけを評価していたことが原因とい
えるでしょう。
とはいえ、経営者自身も、常に結果責任を
問われている立場にあり、どうしても、プ
ロセスよりも結果に関心が行ってしまう傾
向にあります。
確かに、経営者が業績にまったく無関心と
いうわけにはいきませんが、結果だけを求
めると、鹿児島相互信用金庫のような、意
図しない不祥事を招き、結果として顧客か
らの信頼を失ってしまいかねません。
ただ、経営者の方がプロセスに関心が薄く
なる事情として、プロセスの改善をするこ
とが、直ちに業績に結びつかないという面
があると思います。
すなわち、従業員に細かいことを指示せず
に、とにかく業績さえあげてくれれば、そ
の経緯はどうでもよいと考えている経営者
の方は少なくないと思います。
そして、短期的にはそのような方法が通用
します。
しかし、経営環境が厳しくなってきたとき
には、しっかりとしたプロセスを整備して
いるかどうかによって業績に差が出てきま
す。
その一方で、業績がよいときに、経営環境
が悪化するときに備えてプロセスの整備を
する経営者は、少ないと思います。
厳しい言い方ですが、「売上を上げろ」と
旗振りをするだけでよいなら、誰でも経営
者は務まります。
経営者の方は、しっかりとした事業プロセ
スを構築しなければ、真に業績は伸びたこ
とにはならならず、仮に、プロセスを構築
せずに業績があがることがあったら、それ
は追い風による一時的なことだと、受け止
めることが求められると思います。
稲葉理事長の場合、融資が伸びた要因につ
いてきちんと現場で検証することなく、結
果しか見ていなかったことから、不正な融
資を防ぐことができなかったと言えます。
今回の記事の結論は、経営者は結果だけを
みることなく、プロセス整備を通して業績
を上げる仕組みを作らなければ、経営者と
しての役割を果たしていることにはならな
いということです。
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