今年は、報道機関の報道で、ソンタクとい
う言葉をきく機会が増えました。
私は、ソンタクという言葉をきくと、ふた
つのエピソードを思い出します。
ひとつは、私の知り合いのご婦人のAさん
からきいたお話です。
Aさんは、親類の方のお嬢さんが嫁ぐこと
になり、その披露宴に参列したそうです。
そのお嬢さんの嫁ぐ相手は、証券会社の職
員さんで、仲人は、新郎が配属された支店
の支店長だったそうです。
そして、披露宴が始まると、新郎側の来賓
の方のスピーチでは、新郎のことよりも、
新郎の勤務する証券会社の業績のすばらし
さや、仲人の支店長の功績ばかりが話され
て、一体、誰の披露宴なのかという印象を
受けて帰ってきたそうです。
事業を進めるうえで、ソンタクは必要です
が、上下関係があるとはいえ、社内の職員
の間でソンタクすることは無意味である上
に、本来なら顧客のために使うべきエネル
ギーを、社内で浪費することになってしま
います。
しかも、それを会社に所属しない人がいる
おめでたい場で行うことは、特に、新婦側
の来賓には不快な印象を与えてしまうこと
になるでしょう。
私は、Aさんからその話をきいたとき、そ
の証券会社は残念な会社だと感じました。
もうひとつは、かつて、私が事業改善のお
手伝いをしていた会社のB社長のお話しで
す。
Bさんの会社では、パートタイマーを含め
た従業員の方が200人ほどいますが、毎
年、すべての従業員が参加する忘年会が開
かれています。
参加費は会社負担で、私も、その会に招か
れました。
そして、最初に社長のBさんからねぎらい
の言葉があり、それに次いで乾杯が行わ
れ、盛大な忘年会が始まりました。
忘年会が始まると、仲の良い従業員の方同
士で集まった各テーブルで盛り上がってい
ましたが、私と同じテーブルにいたBさん
のもとには、あいさつに来たり、おしゃく
をしに来たりする従業員の方はひとりもい
ませんでした。
でも、そのことにBさんはまったく不満は
持たないどころか、従業員の方が楽しんで
いる様子に満足しているようでした。
すなわち、Bさんの会社は、前述の証券会
社とは真逆の社風だと思いました。
Bさんの会社の事業は、決して順風満帆と
いうわけではありませんが、Bさんのリー
ダーシップのもと、従業員の方の団結力は
すばらしく、底力の強さを感じさせてくれ
る会社で、これからも厳しい経営環境をう
まく乗り切っていくであろうと思っていま
す。
ここまで、ソンタクについて、私がきいた
り経験した2つのエピソードを書きました
が、上司は部下にソンタクをさせるべきで
はないということを伝えようとする内容に
なっています。
とはいえ、このようなことも、あえて私が
述べるまでもありません。
では、なぜこの2つのエピソードを書いた
かというと、意識しているか、無意識かは
別として、ソンタクされたいと思っている
人が少なくないからです。
そして、経営者や幹部の人が、自分がソン
タクされないと気がすまない人がである
と、会社の業績よりも、自分の気分を優先
してしまいがちであるということを、私の
これまでの経験から感じています。
経営者や幹部の方は、会社内で権限を持っ
ているので、いろいろな人からソンタクさ
れる立場にありますが、そういう立場にあ
る人こそ、最も大切なものは何かというこ
とを見失わないことが大切ということが、
今回の記事の結論です。
最近は、トップの人たちが、それを見誤っ
たことが原因で不祥事が起きている会社が
増えているように感じますので、経営者の
方たちには、そのような間違いを起こさな
いでいただきたいと、日々感じています。
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