鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

矜持の費用

昨年の11月に、つくばエクスプレスの電

車が、千葉県流山市南流山駅を、出発時

刻が9時44分40秒であったにもかかわ

らず、20秒早い9時44分20秒に出発

したことで、同路線の運営会社が謝罪をし

ました。


(ご参考→ https://goo.gl/T5ijyn


このことは、「たった20秒で鉄道会社が

謝罪した」ということで、世界中で驚きを

もって報道されたようです。


そもそも、電車が時刻よりも早く出発する

ことは、鉄道営業法第2条や鉄道運輸規程

第22条などで禁止されており、前述のつ

くばエクスプレスの電車の早発は法令違反

であったということもありますが、J-C

astニュースの記事によれば、安全性に

関して重大な出来事だったと運営会社は認

識していたそうです。


(ご参考→ https://goo.gl/brcfXy


すなわち、発車アナウンスなどが行われる

前に、電車の扉が閉まり、電車が出発する

ことは、乗客にとっての安全性を脅かすこ

とであり、また、発車時刻を間違えること

は、電車の乗務員として注意力が欠けてい

ることから起きることであり、重大な事故

につながりかねないと同社では考えていた

ようです。


そこで、同社の謝罪文は、20秒の早発の

内容だったのですが、その意図は、安全性

への意識が散漫だったことをお詫びしてい

るということのようです。


ただ、世界中の報道機関は、20秒の早発

は、さほど問題がないのではないかと考え

ていたから、驚きを持たれたわけですが、

そうであっても鉄道会社は矜持を持って謝

罪したということでしょう。


似たような事例は、他にもいくつもありま

す。


例えば、米国のスターバックスコーヒーで

は、4月にフィラデルフィアの店舗で、同

店のマネージャーが警察へ通報したことに

よって、黒人客2人が逮捕された事件を反

省し、5月に、米国内の直営店8000店

舗を一時閉店し、約175,000人の社

員を対象に人種差別防止のための教育を行

いました。


このことにより、教育のための費用だけで

なく、店舗を閉めることで大きく売上に影

響を受けることになりますが、同社はそれ

くらい事態を大きく受け止めていることが

わかります。


これも、同社の矜持を示すできごとであっ

たと思います。


さらに別の例では、ペヤングソース焼きそ

ばを製造しているまるか食品では、製品の

中に虫が混入していた疑いがあったことか

ら、約半年間、製品の製造と販売を休止し

ました。


その間、製造工場での虫の混入を防ぐ対策

をとり、製造・販売を再開したところ、

24時間体制で製造していたにもかかわら

ず、生産量の2~3倍の注文が殺到したそ

うです。


同社としては、半年間も売上がなくなるこ

とは、大きな打撃となったにもかかわら

ず、時間をかけて徹底的に対処したことが

評価されたこともあり、販売再開後に多く

の注文が来たのでしょう。


ここまで書いたことは、私があえて述べる

までもないことですが、現在は、顧客が製

品を購入するかどうかを決める要因の中

で、会社の姿勢を評価できるかどうかとい

う部分が大きな比重を占めているというこ

とです。


すなわち、大きなコストをともなってでも

会社の矜持を維持することが収益に直結し

ているということです。


一方、矜持を維持するコストを避けようと

すると、かえって批判を浴びてしまうこと

になります。


前述の3つの会社は、このことをわかって

いるということもあり、コストがかかって

でもあえて誠実さを見せる行動につながっ

たのでしょう。


なお、前述の3つの事例とは逆に、経営者

が保身を優先するあまり、会社全体のイ

メージを下げてしまったという例も、残念

ながら少なくありません。


最近の例では、製品データのねつ造をした

会社や、手抜き工事をした建設会社の例が

あります。


そのような会社の対応の悪さは、誠実に対

応した場合にかかる費用と比較して、さら

に多く額の収益を逃すことになったでしょ

う。


このことは、主観的な部分も入るので、明

確にいくらの差が出たのかということは述

べることはできませんが、まるか食品のよ

うに、誠実さへの評価が、製造再開後の注

文の多さに現れることにもなります。


もちろん、同社は金銭的な損得よりも道義

的責任を優先して判断していたとは思いま

すが、経営者の誠実さや会社の矜持は、現

在はとても大切になっているということが

今回の記事の結論です。

 

 

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