鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

新しい買い物

無印良品のスマートフォーンアプリの制作

にかかわった勝部健太郎さんと、無印良品

の金井政明会長、川名常海(つねみ)WE

B事業部長たちによる著書、「新しい買い

物-理想の社会を買い物でつくる」

( https://amzn.to/2koaKZQ )を読みまし

た。


この本を読もうと思ったのは、現在、独特

の商品づくりをしている無印良品が、商品

の価値をどのようにとらえているかという

ことに関心があったからです。


最近のマーケティング手法は、カスタマー

リレーションシップマネジメント(CR

M)、ワントゥワンマーケティングなどが

ありますが、それらもひとつの手法であ

り、普遍ではありません。


また、常に小売業の最先端にいる人の考え

方も知りたいという興味もありました。


そこで、同書の中で、私が共感したいくつ

かのポイントをご紹介したいと思います。


ひとつめは、「買い物は二極化する」とい

うことです。


それは、従来の買い物と新しい買い物に明

確に分かれ、中間的なものは残らないとい

うことです。


従来の買い物とは、いま、私たちが考えて

いる買い物のことで、それらの買い物はコ

モディティ化したものです。


コモディティとは日用品を指しますが、単

に日用品にとどまらず、商品の個性がなく

なっているものも含まれます。


例えば、パーソナルコンピューターは、か

つてはメーカーの個性がありましたが、現

在ではOSのWindowsがデファクト

スタンダードになり、メーカーのブランド

の壁はかなり低くなっていることから、コ

モディティ化が進んでいる商品といえるで

しょう。


そして、従来の方法での買い物の対象の多

くは大量生産・大量販売されるものですの

で、中小企業には不向きであり、新しい買

い物(詳細は後述します)に応える事業こ

そ、中小企業が展開すべき分野といえるで

しょう。


では、具体的に新しい買い物とはどういう

ことかというと、同書によれば、買い物を

通じて共感性、体験性、共創性を得ようと

することだそうです。


これは、いわゆる「コト消費」をより具体

的に述べているものだと思います。


まず、共感については、無印良品の商品の

ひとつの、「ごはんにかけるふかひれスー

プ」は、ふかひれスープの需要のために、

世界で年間1億匹のさめが乱獲され、絶滅

を危惧する人たちから不買運動が起きたも

のの、それは誤解であり、同社の製品は、

まぐろの延縄(はえなわ)漁に、たまたま

交じって収穫されたさめのひれを使ってお

り、ひれ以外の部分も練り物などの材料に

使っていること、また、産地である気仙沼

の震災復興を支援する意味であることを、

プレスリリースなどで伝えたら、その発表

の翌週は、同製品の売上が前の週の2倍に

なった例があるそうです。


すなわち、消費者にとって共感は消費の大

きな判断要因になっているということが分

かります。


次に、体験を買うでは、バルミューダトー

スターの例があるそうです。


そのトースターは数万円するものですが、

性能だけでなく、そのトースターで焼いた

パンを家族でおいしく食べるという体験が

できることが評価され、いまだに高い人気

を維持しているそうです。


これも同様に、消費者が体験を重視してい

ることが分かる例です。


そして、共創するでは、机の上でノートや

書類を立てるために作ったスタンドファイ

ルボックスが、ある主婦がキッチンでフラ

イパンを立てるために使い、それについて

ネットで情報の共有が行われるということ

が起きているそうです。


同社としても、よりよい生活のために自社

製品を使って欲しいという発想から、この

ような仕組みを設けているそうです。


このように、消費者が同社の製品の価値を

高める仕組を提供することは、自社にとっ

て有用ですが、消費者にとってもよりよい

生活が実現できるという利点があります。


以上が私が同書のポイントと感じたもので

す。


同社の考え方はひとつの会社の考え方です

が、どうすれば新しい価値の提供ができる

かということを考える上で大いにヒントに

なると思います。


そして、私が付け加えたいことは、このよ

うな新しい買い物の対象となる商品は、単

なるものづくり(品揃え)ではないという

ことです。


すなわち、共感性、体験性、共創性をつく

るためには、熟練した人材が必要であり、

そのような人材を育成することもこれから

の時代には重要になっているということで

す。

 

 

※この記事はメールマガジンでも配信して

います。ぜひ、ご登録ください。→

http://yuushi-zaimu.net/conference/

 

 

 

f:id:rokkakuakio:20180525124640j:plain