鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

最高のバトンタッチ

ライターの上坂徹さんのご著書、「JAL

の心づかい-グランドスタッフが実践する

究極のサービス」

( https://amzn.to/2wCaZcu )を読みまし

た。


私はこの本を読もうとしたきっかけは、J

ALの従業員の方全員が持つべき意識・価

値観・考え方とされている、JALフィロ

ソフィの中にある、「最高のバトンタッ

チ」について関心があったからです。


「『最高のバトンタッチ』、40項目ある

JALフィロソフィのひとつです。


エアラインの仕事は、グランドスタッフの

仕事だけで完結するわけではありません。


乗客は搭乗手続きを終え、ゲートを抜けた

後もまだ旅を続けています。


機内に入った後、乗客をアテンドする役割

は、客室乗務員やパイロットへ、さらには

目的地の空港スタッフへ、と移っていきま

す。


スタッフのバトンタッチによって、仕事は

完遂されるのであり、自分の担当は終わっ

たからもういい、ということではいけませ

ん。


むしろ、最高のバトンを次に渡すべく、そ

して次にバトンを渡したらどうなるかも、

しっかりイメージしながら、それぞれのス

タッフは努力しなければいけないのです」

(82ページ)

 

最高のバトンタッチの例として、グランド

スタッフは、定時出発に注力しています。


出発時刻の3分前には飛行機のドアを閉め

る必要があるので、出発時刻近くになる

と、チェックインしている人のうち、搭乗

していない人が何人いるか、逐次確認しま

す。


そして、搭乗していない人の履歴やステー

タスなどから、旅慣れた人かそうでない人

かなどを類推しながら空港内を探し、3分

前までには全員が搭乗するよう対応してい

くそうです。


全員が搭乗したら、車いす利用者など、サ

ポートが必要な人などの引継ぎをグランド

スタッフから客室乗務員へ行います。


それが終わると、ドアが閉められ、グラン

ドスタッフは深々と頭を下げて、飛行機を

見送るそうです。


このような最高のバトンタッチは当たり前

のようで、なかなか実践は難しいと私は考

えています。


「顧客にとって、従業員ひとりひとりが会

社を代表している」とよくいわれているも

のの、大きな会社に商品の問い合わせをす

ると、「これは自分の担当ではないので、

●●に問い合わせをしてください」と言わ

れる場面はよくあります。


いわゆるセクショナリズムです。


もし、最高のバトンタッチが浸透していれ

ば、仮に自分の担当外の要件を言われたと

しても、もう少し顧客に寄り添った応答が

できるでしょう。


詳細な説明は割愛しますが、組織的な活動

をする、すなわち1+1=3以上の成果を

得るには、セクショナリズムを避けなけれ

ばなりません。


そのために、最高のバトンタッチの実践は

有効であると私は考えていましたが、それ

を浸透させるためには、特別の方法があっ

たということではなさそうです。


同社は、ひたすらにJALフィロソフィー

を浸透させることに徹しているようです。


特に、スタッフの教育担当者はフィロソ

フィーの考えを率先垂範しているそうで

す。


それは、教官の方の次のような言葉からわ

かります。


「JALフィロソフィが訓練内容に入って

きた当初は、正直、なかなか訓練生に伝

わっていきにくかった。


だんだんわかっていったのは、暗唱した

り、書いたりしたところで、伝わっていく

ものではない、ということです。


教える私たちそのものが、まさにJAL

フィロソフィーの体現者でなければいけな

い。


教官チームにいたときは、これを心がけて

いました」


これは当然のことかもしれませんが、よい

従業員を持ちたいと思えば、幹部がお手本

を見せるしかないということに尽きるで

しょう。


同書を読んで私が感じたことは、「優れた

経営に王道なし」ということです。

 

 

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